「目視調査」とは?│専門用語を簡単に解説!~アスベスト分析用語集~
こんにちは。HAKUTOアスベスト分析センターにて主任分析員を務めております、たっくんです。
前回は、事前調査の第一歩である「図面調査」について解説いたしました。書類から建物の履歴を読み解く、いわば「机上での捜査」でありましたな。
本日は、その捜査資料を手に、いよいよ現場へ赴く第二のステップ、「目視調査」について解説してまいります。専門家がその鋭い目で、一体何を確認しているのか。その深淵を覗いてまいりましょう。

「目視調査」とは

「目視調査」とは、有資格者(建築物石綿含有建材調査者など)が、実際に建物の内外へ立ち入り、目で見て、触れるなどして建材の種類や状態を確認する調査のことであります。
これは、事前調査の3ステップ(図面調査→目視調査→分析調査)の2番目にあたる、現場での調査活動の核となる工程です。図面調査で得た情報が正しいか、図面にない変更点はないかなどを、五感を使いながら確認していく、大変地道で重要な作業なのであります。
目視調査の具体的なプロセス
調査者は、ただ漫然と建物を眺めるわけではございません。科学的かつ体系的な手順に則って調査を進めてまいります。
- 図面と現場の照合
まずは、図面調査で作成した資料を手に、実際の建物の部屋の配置や仕上げ材が、図面通りであるかを確認します。増改築やリフォームで、図面と異なる部分があれば、それを正確に記録いたします。 - 建材の識別と状態評価
次に、天井、壁、床、屋根、配管など、全ての部位を網羅的に確認し、使用されている建材を一つひとつ識別していきます。その際、単に種類を見るだけでなく、「ひび割れはないか」「劣化して脆くなっていないか」「損傷箇所はないか」といった、建材の状態評価を行うことが極めて重要なのであります。 - 記録
調査した全ての箇所、全ての建材について、詳細な写真撮影を行います。どこに、どのような建材が、どんな状態で存在したかという写真記録は、後の報告書作成において、客観的な証拠として大きな意味を持つのです。
目視調査の限界
有資格者による目視調査は非常に精度が高いものですが、それでも「限界」がございます。
- 目視で「有り」または「無し」と判断できるケース
設計図書や建材のロット番号から、明らかにアスベスト含有・非含有が判明している場合や、2006年9月以降に製造されたことが証明できる建材(非含有と判断)など。 - 目視だけでは判断できないケース
見た目が全く同じで、年代だけでは判断がつかない建材(スレート屋根、Pタイル、石膏ボードなど)や、接着剤や下地調整材、仕上塗材など、内部にアスベストが練り込まれている建材。
こうした目視だけでは判断がつかない建材は、報告書に「石綿含有のおそれ有り」または「不明」と記載されます。そして、法律上、このように記載された建材は「アスベストが有るもの」として扱わねばなりません。
たっくんの
ワンポイントアドバイス!
- 有資格者による「現場検証」です
図面という「書類」と、実際の「現場」を繋ぎ合わせ、リスクを洗い出すプロの仕事であります。決して素人判断で行ってはなりませぬ。 - 「劣化状態」の確認が重要です
同じアスベスト含有建材でも、損傷がなく安定していれば飛散リスクは低く、ボロボロに劣化していればリスクは高いと評価されます。この状態評価も、目視調査の重要な役割なのであります。 - 「不明」という結果こそが、次のステップへのサインです
目視調査の結果、「不明な建材」が見つかることは珍しくありません。しかしそれは、調査の失敗ではなく、「ここから先は、科学の力が必要です」という、次の「分析調査」への正確な橋渡しなのであります。
さらに詳しく知りたい方へ
本日は「目視調査」を解説しましたが、この前の段階については用語集の「図面調査」をご参照ください。
また、目視調査で「アスベスト含有のおそれ有り」と判断された建材の見分け方については、コラム記事の「アスベスト含有建材の見分け方を専門家が解説」も大変参考になりますぞ。
そして、目視調査で「不明」とされた建材の正体を科学的に突き止める「分析調査」こそ、私たちHAKUTOアスベスト分析センターの専門領域であります。確かな安心を得るために、ぜひご相談ください。
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