「層別分析」とは?│専門用語を簡単に解説!~アスベスト分析用語集~
こんにちは。HAKUTOアスベスト分析センターにて主任分析員を務めております、たっくんです。
皆様は、建物の壁や床が、実は何層にも重なって作られているケースが多いことをご存知でしょうか。例えば壁であれば、下地材の上にパテが塗られ、その上に接着剤、そして仕上げの壁紙が貼られている、といった具合であります。
こうした多層構造の建材からアスベスト検体を採取してアスベスト分析にかける際、分析の精度を確かなものにするために不可欠となるのが「層別分析」という考え方であります。
本日は、アスベストの見逃しを防ぐための重要な手法、「層別分析」について詳しく解説してまいりましょう。

アスベストの「層別分析」とは

層別分析とは、複数の層で構成されている建材から採取した検体を、物理的に一層ずつ分離し、それぞれの層についてアスベストの有無を分析する手法のことを指します。
例えば、床材のPタイルを分析する場合、Pタイル本体の層と、それを床に固定している接着剤の層を別々に分析いたします。もしPタイル本体にアスベストが含まれていなくても、接着剤に含まれている可能性があるからです。
検体を丸ごと分析するのではなく、層ごとに分析することで、「どの層にアスベストが含まれているか」を正確に特定することが、層別分析の目的であります。
なぜアスベストの層別分析が重要なのか?
もし層別分析を行わず、検体を丸ごと分析してしまうと、重大な見逃しが発生するリスクがあります。
アスベスト含有層の見逃しリスク
建材全体としてはアスベストの含有率が低い場合でも、特定の層にだけ高濃度で含まれているケースがあります。
検体を丸ごと分析すると、アスベストが含まれていない層によって全体の濃度が薄まり、法律の基準値である0.1%以下となって「アスベスト無し」と誤って判断されてしまう危険性があるのです。
層別分析を行えば、たとえ薄い一層に含まれているアスベストも見逃すことなく確実に検出することができます。
適切な除去範囲の特定
層別分析によって「どの層にアスベストが含まれているか」が分かれば、除去工事の範囲を適切に判断できます。
例えば、壁紙の裏のパテにのみアスベストが含まれていると分かれば、壁紙とその下の石膏ボードまで除去する必要はない、といった合理的な工事計画が立てられます。これは、不要な工事費用を削減することにも繋がります。
層別分析が特に必要な建材の例
層別分析は、特に以下のような多層構造の建材を分析する際に重要となります。
- 壁・天井: 下地ボード、下地調整材(パテ)、接着剤、壁紙・化粧シートなど
- 床: Pタイル、長尺シート、クッションフロアなどの床材本体と、それらを貼り付ける接着剤
- 外壁: 吹付けタイルやリシンなどの仕上塗材と、その下地調整材
- 屋根: 防水層や下葺き材など
たっくんの
ワンポイントアドバイス!
本日は「層別分析」について解説いたしましたが、ご理解いただけましたでしょうか。最後に、重要な点をまとめておきましょう。
- ポイント1
層別分析とは、多層の建材を一層ずつに分け、それぞれを分析する手法であります。アスベストの見逃しを防ぐために不可欠です。 - ポイント2
検体を丸ごと分析すると、アスベストの濃度が薄まって「無し」と誤判断されるリスクがあります。層別分析は、そのリスクを回避します。 - ポイント3
正確な分析を行うためには、検体を採取する段階で、建材のすべての層を採取することが大前提となりますぞ。
さらに詳しく知りたい方へ
層別分析は、アスベストの有無を調べる「定性分析」の精度を高めるための重要な工程です。定性分析や、含有率を調べる定量分析との違いについては、こちらのコラムで詳しく解説しております。
アスベストの定性・定量分析、どっちを選ぶ?費用と必要性をケース別に徹底比較
私たちHAKUTOアスベスト分析センターでは、持ち込まれた検体の構造を丁寧に見極め、必要に応じて層別分析を行うことで、見逃しのない高精度な分析結果をご提供しております。分析のことでご不明な点がございましたら、いつでもご相談ください。
よく見られている用語
アスベストの定性分析が必要な時は、当社にご相談ください。
お客様の状況に合わせた最適なご提案をさせていただきます。