「みなし措置」とは?│専門用語を簡単に解説!~アスベスト分析用語集~
こんにちは。HAKUTOアスベスト分析センターにて主任分析員を務めております、たっくんです。
解体や改修工事前のアスベスト事前調査において、「必ず分析をしなければならないのか?」というご質問をいただくことがあります。実は、法律では分析を行わずにアスベスト対策を進める「みなし措置」という選択肢が認められております。
一見、分析費用と時間を節約できる魅力的な方法に聞こえるかもしれません。しかし、この措置には大きな落とし穴が潜んでいることも事実であります。
本日は、この「みなし措置」とは何か、そのメリットとデメリット、そしてどのような場合に選択すべきかについて、詳しく解説してまいりましょう。

アスベスト調査における「みなし措置」とは

「みなし措置」とは、建築物等の解体・改修工事に際し、アスベスト含有の有無が不明な建材を、科学的な分析を行わずに「アスベスト含有あり」とみなして、法律に基づいたばく露防止対策や廃棄物処理を行うことを指します。
これは石綿障害予防規則(石綿則)で認められている正式な措置であり、図面調査や現地での目視調査だけではアスベストの有無が判断できないものの、何らかの理由で分析調査を行わない場合に選択されます。
つまり、「分析はしないが、入っているものとして扱い、最も安全側に倒した対策を行う」という考え方であります。
アスベストみなし措置のメリット(利点)
みなし措置を選択する主なメリットは、以下の2点であります。
時間の短縮
最大のメリットは、工期の短縮であります。建材から検体を採取し、分析機関に送付して結果を待つという工程(数日~1週間程度)を省略できます。工事のスケジュールが非常にタイトで、一日でも早く着工したい場合には大きな利点となります。
分析費用の削減
アスベストの分析そのものにかかる費用を直接的に削減できます。分析箇所が多いほど、この費用削減効果は大きくなると言えましょう。
アスベストみなし措置のデメリット(欠点)
一方で、みなし措置にはコスト面で大きなデメリットが存在し、安易な選択は禁物であります。
除去・処分費用が高額になるリスク
これが最も重大なデメリットであります。もし、実際にはアスベストが含まれていなかった建材を「みなし措置」で処理した場合、本来は不要であったはずの厳重なばく露防止対策(隔離養生や高レベルの保護具など)や、特別管理産業廃棄物としての高額な処分費用が発生してしまいます。
多くの場合、削減できる分析費用よりも、割高になる除去・処分費用の方がはるかに上回ってしまいます。
過剰な安全対策の実施
作業員の皆様は、実際には不要かもしれない厳重な保護具を着用し、厳格な作業手順を踏むことになります。安全を確保する上では良いことですが、本来必要のない作業負荷とコストを強いることにも繋がります。
アスベストみなし措置が選択されるケース
では、どのような場合に「みなし措置」が合理的な選択となるのでしょうか。
- 明らかにアスベスト含有建材である場合
設計図書や過去の記録から、明らかにレベル1の吹付けアスベストなどが使用されていると分かりきっており、除去することが確定しているケース。 - 工事のスケジュールが極めて厳しい場合
分析結果を待つことで生じる工期の遅延が、割高な除去費用を上回るほどの損害に繋がるケース。 - 除去対象の面積が非常に小さい場合
建材の量がごくわずかで、割高な除去費用を支払っても、分析費用と大差がない、あるいは許容範囲内であると判断できるケース。
アスベスト分析か、みなし措置か?賢い判断のために
ここまで見てきたように、「みなし措置」は時間と分析費用を節約できる一方で、結果的に総工費を大幅に押し上げるリスクをはらんでおります。
判断の鍵は、「分析費用」と「みなし措置によって割高になる可能性のある除去・処分費用」を天秤にかけることであります。
ほとんどの場合、事前に正確なアスベスト分析を行い、「アスベストの有無」という事実を確定させることが、最も経済的で合理的な選択となります。私たち分析機関は、お客様が憶測や不安から解放され、確信をもって次のステップに進むためのお手伝いをいたします。
「みなし措置」を検討される際には、そのメリット・デメリットを十分に理解し、費用対効果を慎重に見極めることが肝要でありますぞ。
たっくんの
ワンポイントアドバイス!
本日はアスベストの「みなし措置」について解説いたしましたが、ご理解いただけましたでしょうか。最後に、重要な点をまとめておきましょう。
- ポイント1
みなし措置とは、「分析をせずにアスベスト有りとして扱う」法的な選択肢であります。工期短縮や分析費用の削減がメリットであります。 - ポイント2
最大のデメリットは、「もしアスベストが含まれていなかった場合、除去・処分費用が不必要に高額になる」リスクがあることであります。 - ポイント3
安易な選択は、総コストの増大に繋がる可能性があります。原則は「まず分析」と心得、事実に基づいて判断することが最も賢明な選択でありますぞ。
さらに詳しく知りたい方へ
みなし措置を選択する際に削減できる「分析費用」が具体的にいくらなのかを知ることで、より正確な判断が可能となります。こちらのコラムで詳しく解説しておりますので、ぜひご参照ください。
アスベスト分析の費用はいくら?料金相場と見積もり取得のポイント
アスベストの有無が分からないという「不安」は、みなし措置では解消されません。私たちHAKUTOアスベスト分析センターは、科学的な分析という「確信」をご提供することで、お客様のコスト最適化と安全確保に貢献いたします。分析が必要になりましたら、ぜひお声がけください。
よく見られている用語
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