「レベル(アスベストレベル)」とは?│専門用語を簡単に解説!~アスベスト分析用語集~
こんにちは。HAKUTOアスベスト分析センターにて主任分析員を務めております、たっくんです。
アスベストに関するご相談で、お客様から最も多く寄せられる質問の一つに、「うちの建物はアスベストのレベル1、2、3のどれに該当するのか?」「レベルによって何が違うのか?」というものであります。
アスベストの「レベル(リスクレベル)」は、建材の危険性や粉じんの飛散のしやすさを示す重要な指標であります。このレベルを正しく理解することは、適切な対策を講じ、健康被害や法的なリスクを回避する上で欠かせません。
この用語集では、アスベストのレベル1、レベル2、レベル3の定義、含まれる建材の種類、そしてそれぞれに求められる対策について、専門的かつ丁寧に解説してまいります。

「レベル(アスベストレベル)」とは

アスベストの「レベル」とは、アスベスト含有建材の危険性や粉じんの飛散のしやすさ(発じん性・ばく露リスク)に応じて、国が定めた分類のことであります。このレベル分けは、主に石綿障害予防規則(石綿則)や大気汚染防止法といった法令に基づき、作業時の隔離措置や作業方法、届出義務などを規定するために用いられます。
アスベストのレベルは、最も危険な「レベル1」から、比較的危険性の低い「レベル3」までの3段階に分けられております。危険性の高低は、建材が脆く、容易に粉じんを飛散させるか否かによって決定されます。
レベルごとの定義と含まれる主な建材
ここでは、アスベストのレベル1、レベル2、レベル3の具体的な定義と、それぞれに該当する代表的な建材を見てまいりましょう。
レベル1:極めて危険性が高い(発じん性が著しく高い)
アスベストレベル1は、最も危険性が高く、作業時に粉じんを大量に飛散させる可能性が著しく高い建材が分類されます。そのため、除去作業の際には厳重な隔離措置と、石綿則に基づく届出など、最も厳しい法規制が適用されます。
主な建材
- 吹付けアスベスト(吹付け石綿):ビルや工場の天井、梁、壁などに断熱・吸音目的で吹き付けられた綿状の建材であります。密度が低く非常に脆いため、少しの振動や衝撃で容易に繊維が飛散いたします。
- アスベスト含有吹付けロックウール(含有率95%以上)
レベル2:危険性が高い(発じん性が高い)
アスベストレベル2は、レベル1ほどではないものの、解体や破砕によって粉じんを飛散させる危険性が高い建材が分類されます。レベル1に次ぐ厳重な管理が求められます。
主な建材
- 石綿含有保温材・耐火被覆材・断熱材:ボイラーや配管、空調ダクトなどに使用されるものが代表的であります。これらの建材も、破損したり切断したりすると、内部の石綿繊維が飛散しやすくなります。
- アスベスト含有吹付けロックウール(含有率95%未満)
アスベストレベル3:比較的危険性が低い(発じん性が低い)
レベル3は、板状に固く成形されており、通常の使用状態ではアスベスト繊維が飛散する可能性が低い建材が分類されます。非飛散性アスベスト建材とも呼ばれます。
しかし、切断・穿孔(穴あけ)・研磨などの作業によって建材を損傷・破砕した場合、粉じんを飛散させるリスクが生じるため、適切な措置が不可欠であります。
主な建材
- 石綿含有成形板:スレート波板、石綿セメント板(ケイカル板など)、ビニル床タイル(Pタイル)、石膏ボードなど、建物の壁や屋根、床など多岐にわたって使用されております。
- 石綿含有仕上塗材:外壁に使われるリシン、スタッコなどの塗料であります。
- 石綿含有パッキン・ガスケット・ブレーキライニング:配管や機械の接合部に使用される副資材であります。
レベルごとの対策と法的な義務
アスベストのレベルによって、求められる対策(除去方法や保護具)や法的な義務(届出)は大きく異なります。
レベル1・レベル2の対策
レベル1、レベル2の建材は、飛散性が極めて高いため、除去作業では厳重な隔離養生や負圧除じん装置の使用が義務付けられております。
作業を行う者には、石綿作業主任者の選任や、専用の防じんマスク(区分3以上)と保護衣の着用が求められます。また、大気汚染防止法に基づき、事前の特定工事届出が必要です。
レベル3の対策
レベル3は、原則として非飛散性でありますので、レベル1・2のような大規模な隔離養生は義務付けられておりません。しかし、建材を破砕・切断する場合は、粉じんが飛散するリスクがあるため、作業箇所を湿潤化し、局所排気装置を使用するなどの措置が必要であります。
作業を行う者にも、専用の防じんマスク(区分2以上)と保護衣の着用が求められます。レベル3は、大気汚染防止法に基づく特定工事届出は不要とされておりますが、2022年4月からのアスベスト事前調査報告義務の対象であります。
アスベスト調査と分析が「レベル特定」の鍵
皆様が建物の解体・改修工事を行う際、最初に行うべきはアスベスト事前調査であります。この調査では、まず設計図書などによる書面調査、そして建材の特定のための目視調査を行います。
目視調査でアスベスト含有の可能性がある建材が見つかった場合は、検体(試料)を採取し、アスベスト分析を行うことになります。
この分析結果によって「アスベストの有無」と「建材の種類」が確定し、最終的に「この建材はレベル〇に該当する」という判断を下すことができるのであります。
アスベストのレベル判断は、専門的な知識を要する重要な工程であります。誤った判断は、法的な罰則はもちろん、何よりも人々の健康被害に直結いたします。正確なレベル特定には、信頼できる分析機関による定性分析が不可欠でありますぞ。
たっくんの
ワンポイントアドバイス!
本日はアスベストの「レベル」について解説いたしましたが、ご理解いただけましたでしょうか。最後に、重要な点をまとめておきましょう。
- ポイント1
最も危険なレベル1・2は、吹付け材や保温材など、「飛散しやすい」建材が該当いたします。厳重な隔離養生と、大気汚染防止法に基づく届出が必須であります。 - ポイント2
レベル3は、スレート板などの「固く成形された」非飛散性の建材であります。通常の使用では危険性が低いですが、解体・切断などで損傷させると危険が生じます。 - ポイント3
お客様の建材がどのレベルに該当するかは、必ず専門機関による分析を通じて特定する必要があります。自己判断は、健康と法的なリスクを伴いますので、くれぐれもお気をつけください。
さらに詳しく知りたい方へ
アスベストのレベルに応じて、除去・解体工事の費用は大きく変動いたします。具体的な費用相場を知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
アスベスト除去・解体工事の費用相場 | レベル別の単価と総額を解説
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