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2025.06.30

クリソタイル(白石綿)とは?専門家が特徴・危険性・主な使用箇所を徹底解説

「アスベスト」と一括りにされがちですが、実はいくつかの種類が存在することをご存じでしょうか。その中でも、世界中で最も多く使用され、日本国内で使われたアスベストの9割以上を占めると言われているのが、「クリソタイル(白石綿)」です。

アスベスト問題を正しく理解し、適切に対処するためには、この最も身近なアスベストであるクリソタイルについて知ることが不可欠です。

本記事では、アスベスト分析の専門家として、クリソタイルの正体から、その特徴、危険性、そしてどのような建材に使われているのかまで、深く掘り下げて徹底的に解説します。

クリソタイル(白石綿)とは?その正体と特徴

クリソタイルは、蛇紋石(じゃもんせき)族に分類される天然の鉱物繊維です。「白石綿(しろいしわた・しらせきめん)」という和名の通り、純粋なものは白色をしていますが、実際には灰色や薄緑色を帯びていることもあります。

最大の特徴は、しなやかで柔軟性に富んだ、「縮れた(カーリー状の)繊維」である点です。他のアスベスト(アモサイトやクロシドライトなど)が硬く真っ直ぐな針状繊維であるのに対し、クリソタイルは綿のように柔らかく、加工しやすい性質を持っています。

この柔軟性に加え、高い耐熱性、耐薬品性、絶縁性、そして他の材料と混ざりやすいといった数多くの優れた特性から、非常に安価で便利な工業材料として、世界中のあらゆる建材や工業製品に幅広く利用されてきました。

クリソタイルの危険性と健康への影響

「クリソタイルは他のアスベストより危険性が低い」という説を耳にすることがありますが、これは大きな誤解です。

世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)は、クリソタイルを含む全ての種類のアスベストを、発がん性リスクが最も高い「グループ1(人に対する発がん性が認められる)」に分類しています。

クリソタイルの繊維は極めて細かく、空気中に飛散すると、呼吸によって肺の奥深く(肺胞)にまで到達します。体内に一度入った繊維は分解されずに長く体内に留まり、細胞を傷つけ続け、数十年という長い潜伏期間を経て、以下のような深刻な病気を引き起こす原因となります。

  • 悪性中皮腫
    肺を覆う胸膜などにできる、極めて悪性度の高いがん。
  • 肺がん
    アスベストばく露は、喫煙と並ぶ肺がんの主要なリスク因子です。
  • 石綿肺(アスベストーシス)
    肺が線維化し、硬くなることで呼吸機能が低下する病気。
  • びまん性胸膜肥厚
    肺を包む胸膜が厚く硬くなり、呼吸困難などを引き起こします。

「安全なアスベストなど存在しない」というのが、現在の国際的な共通認識です。クリソタイルもまた、明確に人の健康を脅かす有害物質であることを、まずご理解ください。

主な使用箇所はどこ?身の回りのクリソタイル

では、私たちの身の回りのどこにクリソタイルは使われてきたのでしょうか。その用途は非常に多岐にわたりますが、特に建築物では以下の建材に注意が必要です。

レベル3建材(非飛散性アスベスト建材)

最も多く使用されているのが、セメントなどと混ぜて硬く固められた「レベル3」の建材です。通常の状態では飛散しにくいですが、割れたり削れたりするとアスベストが飛散する危険があります。

  • 屋根材
    戸建て住宅で最も一般的な「スレート屋根(コロニアル、カラーベスト)」に広く使用されています。
  • 外壁材
    「窯業系サイディング」と呼ばれる板状の外壁材に含まれています。
  • 床材
    事務所や学校などで使われる硬い正方形の「Pタイル(コンポジションビニル床タイル)」や、その接着剤。
  • 内装材
    天井や壁に使われる「石綿含有せっこうボード(石膏ボード)」や「ケイ酸カルシウム板第1種」。

レベル2建材(飛散性アスベスト建材)

クリソタイルは、保温材や断熱材などのレベル2建材にも使用されていました。

  • 保温材・断熱材
    ボイラー本体や配管、空調ダクトなどに巻き付けられた保温材。

レベル1建材(飛散性が著しく高い)

数は少ないですが、最も危険なレベル1の吹付け材にも、他のアスベストと混ぜて使用された例があります。

  • 吹付け材
    鉄骨の耐火被覆や、機械室・駐車場の天井の吸音・断熱材。

その他

建築物以外でも、自動車のブレーキパッドやクラッチ、工業用のパッキンやガスケット(配管の接合部などのシール材)など、数えきれないほどの製品に使用されてきました。

クリソタイルの見分け方と分析の重要性

これだけ多くの建材に使われているクリソタイルですが、目視だけでその有無を100%正確に見分けることは、専門家であっても不可能です。

「白いからクリソタイルだろう」「いや、これはただのセメントだ」といった自己判断は、大変危険です。アスベストではないと思っていた建材に実はクリソタイルが含まれていたり、その逆のケースも少なくありません。

アスベスト含有の有無を確実に知る唯一の方法、それが専門機関による「分析」です。

私たち分析機関では、JIS A 1481-1という公的な規格に基づき、偏光顕微鏡などを用いて、検体に含まれる繊維がクリソタイルかどうかを科学的に特定します。この客観的な分析結果があって初めて、法的に正しく、安全な対策を計画・実行することができるのです。

正しく知ることが、安全な対策の第一歩

今回は、最も身近なアスベストである「クリソタイル(白石綿)」について解説しました。

  • クリソタイルは、国内で最も多く使われたアスベストである。
  • 危険性が低いというのは誤解で、明確な発がん性物質である。
  • 屋根、壁、床など、非常に多くの身近な建材に使用されている。
  • 目視での判断は不可能であり、確実な判定には「分析」が不可欠である。

もし、ご自宅や管理されている建物で「これはクリソタイルが含まれているのでは?」と疑われる建材を見つけたとしても、決してご自身で判断したり、不用意に触ったりしないでください。

私たちHAKUTOアスベスト分析センターにご相談いただければ、精度の高い分析を通じて、その建材が本当にクリソタイルを含んでいるのか、安全なものなのかを明確にいたします。正しく知ることから、安心できる未来への第一歩が始まります。

アスベストの定性分析が必要な時は、当社にご相談ください。
お客様の状況に合わせた最適なご提案をさせていただきます。

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