2025.12.08

吹付けアスベスト(レベル1)の極めて高い危険性と絶対にしてはいけないこと

アスベストには危険度を示す「レベル」がありますが、その中でも「レベル1」は、まさに別格の危険性を持ちます。それは、アスベスト含有建材の中で最も飛散しやすく、最も深刻な健康被害を引き起こすリスクをはらんでいるからです。

そのレベル1の代表格が「吹付けアスベスト(吹付け石綿)」です。
もし、ご自身の建物の天井裏や機械室などで、綿状の物質が鉄骨に吹き付けられているのを見つけた場合、それは絶対にご自身で触れてはならない「非常に危険なサイン」かもしれません。

この記事では、なぜ吹付けアスベストがこれほどまでに恐れられているのか、その極めて高い危険性の正体と、万が一発見してしまった場合に「絶対にしてはいけないこと」を、専門家の立場から徹底的に解説します。

この記事でわかること

  • なぜアスベストレベル1(吹付けアスベスト)が最も危険なのかがわかる
  • どのような場所に吹付けアスベストが使われているかがわかる
  • レベル1の除去作業が、いかに厳重な管理下で行われるかがわかる
  • 吹付けアスベストを見つけた場合の正しい対処法がわかる

この記事で解説する知識は、あなた自身と、あなたの周りの人々の健康を守るために不可欠なものです。

吹付けアスベスト(レベル1)とは?その正体と極めて高い危険性

吹付けアスベストとは、アスベストをセメントなどの結合材と水で混ぜ合わせ、専用のガンで鉄骨などの建材に直接吹き付けたものです。まるで綿のような、あるいは土のような見た目をしています。

その最大の特徴は、極めて高い飛散性にあります。

危険性の理由1:非常に脆く、結合力が弱い

吹付けアスベストは、指で軽く押すだけで崩れてしまうほど脆く、繊維同士の結合力が非常に弱い状態です。そのため、建物の振動、風、あるいは人の出入りといった些細な刺激でも、アスベスト繊維が簡単に空気中に飛散してしまいます。

危険性の理由2:高濃度のアスベストを含有

製品によっては、重量の60%以上という高濃度でアスベストを含んでいるものもあります。一度飛散すると、空気中のアスベスト濃度が急激に高まり、短時間で大量に吸い込んでしまう(高濃度ばく露)リスクが極めて高いのです。

危険性の理由3:劣化による飛散リスクの増大

施工から数十年が経過した現在、多くの吹付けアスベストは経年劣化が進んでいます。表面が剥がれ落ちたり、垂れ下がったりしているケースも少なくなく、すでにアスベスト繊維が飛散し続けている危険な状態の建物も存在します。

この「いつ飛散してもおかしくない」状態こそが、吹付けアスベストがアスベストレベル1に分類され、最も厳重な対策が求められる理由なのです。

どのような場所に吹付けアスベストは使われているのか?

吹付けアスベストは、その優れた耐火性、断熱性、吸音性から、主に1975年(昭和50年)以前に建てられた鉄骨造の建築物で多く使用されました。

  • 耐火被覆として: 火災時に鉄骨が熱で曲がってしまうのを防ぐため、ビルの鉄骨の柱や梁、駐車場の天井などに吹き付けられました。
  • 吸音・断熱材として: 機械室やボイラー室、空調室、エレベーターの昇降路といった、音や熱が発生する場所の天井や壁に多く使用されました。

これらの場所は、普段人が立ち入らない機械室や天井裏が多いため、アスベストの存在に気づかれないまま放置されているケースが少なくありません。

レベル1の除去工事がいかに厳重かを物語る対策内容

吹付けアスベストの除去作業は、法律で最も厳しい規制が課せられています。その内容を知れば、いかにこの建材が危険なものとして扱われているかがお分かりいただけるでしょう。

  • 作業計画の策定と届出: 作業開始の14日前までに、労働基準監督署と自治体の両方に、詳細な作業計画を届け出る義務があります。
  • 完全な隔離養生: 作業場所を、厚いプラスチックシートで何重にも覆い、外部と完全に密閉します。
  • セキュリティゾーンの設置: 作業員が出入りするための前室を設け、そこで付着したアスベストを除去してから外部に出るよう徹底します。
  • 負圧除じん装置の設置: 作業場所の気圧を常に外部より低く保ち、万が一隔離シートに隙間ができても、汚染された空気が外に漏れ出さないようにします。
  • 最高レベルの保護具の着用: 作業員は、電動ファン付き呼吸用保護具や隙間のない防護服など、最も防護性能の高い装備を着用します。
  • 厳重な廃棄物処理: 除去した吹付けアスベストは、湿潤化し、頑丈な袋に二重に梱包され、「特別管理産業廃棄物」として最も厳格な方法で処分されます。

これらの対策は、ほんの一部の刺激でさえも許さない、という強い意志の表れです。

絶対にしてはいけないこと:吹付けアスベストを見つけたら

もし、ご自身の建物で吹付けアスベストらしきものを見つけてしまった場合、パニックになる必要はありませんが、以下の行動は絶対に避けてください。

  • 絶対に触らない、近づかない: 脆いため、触れるだけで繊維が飛散します。興味本位で近づくのも危険です。
  • 絶対に自分で掃除しない: 掃除機などで吸い込むと、フィルターを通過してより細かい繊維を排気口からまき散らすことになり、事態を悪化させます。
  • 絶対に自分で除去しようとしない: 上記の厳重な対策なく除去作業を行うことは、自殺行為に等しいだけでなく、周囲の環境を深刻に汚染する犯罪行為です。
  • 絶対に放置しない・隠さない: 劣化が進んでいる場合、放置しているだけでアスベストが飛散し続ける可能性があります。また、建物を売却・賃貸する際にその存在を隠蔽すると、後に法的な責任を問われることになります。

正しい対処法:ただちに専門家へ連絡

吹付けアスベストの疑いがある物質を発見した場合、取るべき行動は一つだけです。
「ただちにその場所への立ち入りを禁止し、専門の調査会社に連絡する」
これに尽きます。専門家は、安全を確保しながら現状を把握し、必要な場合は検体を採取してアスベスト分析を行い、アスベストの有無と種類を確定させます。その科学的な結果に基づいて、初めて今後の対策を安全に検討することができるのです。

まとめ:レベル1の危険性を正しく恐れ、適切な行動を

吹付けアスベスト(レベル1)の突出した危険性について、ご理解いただけたでしょうか。

  • まとめのポイント1:吹付けアスベストは、極めて脆く、少しの刺激で高濃度のアスベストを飛散させるため、レベル1に分類される最も危険な建材です。
  • まとめのポイント2:主に1975年以前の鉄骨造建築物の耐火被覆や断熱材として、天井裏や機械室などに使用されています。
  • まとめのポイント3:もし発見しても、絶対に触らず、近づかず、自分で対処しようとせず、ただちに専門の調査会社に相談することが、唯一の正しい対処法です。

「正しく恐れる」という言葉がありますが、アスベストレベル1は、まさにその言葉が当てはまります。その危険性を過小評価することなく、しかしパニックにもならず、冷静に専門家を頼ることが、あなたと周囲の安全を守るための最善の選択です。
私たちHAKUTOアスベスト分析センターは、その第一歩である科学的な分析を通じて、皆様が直面するリスクに確かな情報を提供することをお約束します。

アスベストの定性分析が必要な時は、当社にご相談ください。
お客様の状況に合わせた最適なご提案をさせていただきます。

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