【事例】築40年の戸建て住宅、リフォーム前のアスベスト事前調査と分析結果
「長年住んできた愛着のある家を、もっと快適にしたい」
「中古物件を購入して、自分たちのスタイルにリフォームしたい」
そんな思いでリフォームやリノベーションを計画するとき、必ず向き合うことになるのが「アスベスト(石綿)」の問題です。特に、築年数が経過した住宅では、思わぬ場所にアスベストが使用されている可能性があります。
しかし、実際に「事前調査」や「分析」がどのように行われ、どんな結果が出て、その後どう対応していくのか、具体的なイメージが湧かない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、実際に弊社にご依頼いただいた「築40年の戸建て住宅」の事例を基に、ご相談から分析結果の判明、その後の対応までの流れを追いながら、事前調査と分析の重要性をリアルにお伝えします。
お客様のご相談内容リフォーム計画とアスベストへの不安
今回ご紹介するのは、金沢市にお住まいのA様のケースです。
- 建物概要
築40年(1985年頃の建築)の木造2階建て戸建て住宅 - 計画内容
ご家族のライフスタイルの変化に合わせ、1階のキッチンとリビングを一体化する大規模な間取り変更リフォーム - ご相談の経緯
リフォームを依頼した工務店から、「2022年の法改正により、工事の前にアスベストの有無を調べる事前調査が義務付けられています。図面や目視だけでは判断できない建材があるため、専門機関での分析が必要です」と説明を受け、弊社にご連絡をいただきました。
A様は、アスベストという言葉は知っていたものの、まさか自分の家に関係があるとは思っておらず、当初は「分析が必要なの?」と少し戸惑いと不安を感じていらっしゃったご様子でした。
事前調査の実行図面調査から、疑わしい建材の特定へ
まず、リフォーム会社が契約している有資格の調査者が、法律に基づき事前調査を開始しました。
ステップ1図面調査
建築当時の設計図書を確認したところ、屋根には「スレート葺き」、キッチンの天井には「ケイ酸カルシウム板」、リビングの床には「ビニル床タイル」といった記載があり、これらはいずれも1980年代にアスベスト含有製品が広く流通していた建材でした。
ステップ2現地での目視調査
次に、調査者が現地で実際の建物の状態を確認しました。
- 屋根
図面通り、スレート屋根が使用されていました。経年劣化は見られるものの、破損して飛散している様子はありませんでした。 - 天井
キッチンの天井は、ケイ酸カルシウム板と思われる板材で施工されていました。 - 床
リビングの床には、図面通りビニル床タイル(Pタイル)が敷き詰められていました。
以上の調査から、この3つの建材については「アスベスト含有のおそれ有り」と判断され、「分析調査」が必要となりました。
分析の実施3つの検体から見えてきたこと
調査者の手によって、上記3つの建材から慎重に検体(サンプル)が採取され、分析依頼書と共に弊社のラボへ送付されました。
私たちHAKUTOアスベスト分析センターでは、お預かりした3つの検体それぞれについて、JIS A 1481-1(定性分析)に基づき、アスベストの有無を特定する分析を行いました。
驚きの分析結果と、その後の正しい対応
数日後、A様と工務店様へ分析結果報告書をお渡ししました。その内容は、A様にとって少し驚きのあるものでした。
- 検体1:屋根のスレート材
結果:クリソタイル(白石綿)を検出
これは築年数から想定内の結果でした。 - 検体2:キッチンの天井ボード
結果:アスベストは検出されず
疑わしい建材でしたが、アスベストは含まれていないことが確定し、A様も一安心されました。 - 検体3:リビングのPタイル
結果:クリソタイル(白石綿)を検出
ただし、特筆すべきは、タイル本体からではなく、タイルを床に貼り付けていた「黒い接着剤」からアスベストが検出された点です。
この「床タイルの接着剤」からの検出は、一般の方にはなかなか気づきにくいポイントであり、A様も「まさか接着剤に含まれているとは」と驚かれていました。
この正確な分析結果があったことで、A様と工務店は、リフォーム工事の着工前に、アスベスト対策について具体的な計画を立てることができました。
- 屋根
今回のリフォーム範囲外であるため、飛散防止の応急処置を施し、将来の葺き替え工事まで現状維持とする。 - 天井
アスベストが含まれていないため、計画通りに解体・撤去する。 - 床
アスベスト含有の接着剤を、飛散しないよう湿潤化させながら、専門の作業員が丁寧に除去する計画を立てる。
もし事前調査・分析をしていなかったら…
仮に、この事前調査と分析を省略してリフォームを始めていたら、どうなっていたでしょうか。
おそらく、リビングの床を剥がす工程で、作業員はアスベスト含有を知らないまま接着剤を電動工具などで削り取っていたでしょう。その結果、目に見えないアスベスト繊維がリビング中に飛散し、作業員だけでなく、A様ご家族も危険にさらされていたかもしれません。
工事は即時中断となり、飛散したアスベストの除去・清掃費用、工期の遅延、計画変更など、当初の予算を大幅に超える想定外のコストと時間が発生していた可能性が極めて高いです。
この事例から学べること
今回のA様の事例は、私たちに事前調査と分析の重要性について、多くのことを教えてくれます。
- 築40年程度の住宅には、アスベストが使われている可能性が高い。
- 屋根や壁だけでなく、「接着剤」など、思わぬ箇所に潜んでいることがある。
- 目視での判断は不可能。正確な分析こそが、唯一のリスク確定手段である。
- 着工前に調査・分析を行うことで、安全を確保し、結果的にコストと工期を守ることができる。
事前調査と分析は、リフォームや解体を計画する上での「余計なコスト」ではありません。それは、ご家族と職人の「健康」、そして大切な住まいの「資産価値」を守るための、最も重要で賢明な「先行投資」なのです。
A様のように、ご自宅のリフォームでアスベストに不安を感じていらっしゃる方は、ぜひ私たちにご相談ください。確かな分析技術で、お客様の安全な住まいづくりをサポートします。
アスベストの定性分析が必要な時は、当社にご相談ください。
お客様の状況に合わせた最適なご提案をさせていただきます。