天井のアスベストを見分ける方法|危険性の高い天井材の種類と注意点を専門家が解説

ふと見上げた天井に、シミやたわみ、見慣れない模様があったとき、「この天井、アスベストは大丈夫だろうか?」と不安に感じたことはありませんか?
天井は、私たちの生活空間の真上にあり、アスベスト対策において最も注意すべき場所の一つです。なぜなら、過去には危険性の高いアスベスト含有建材が、天井の耐火・吸音・断熱目的で広く使用されてきたからです。
特に、天井から白い粉が落ちてきたり、天井材が剥がれ落ちたりしている場合、それは健康被害に直結する危険なサインかもしれません。
この記事では、アスベスト分析の専門家である私たちが、天井に使用されているアスベスト含有建材の代表的な種類、その見分け方のポイント、そして危険性について、写真を交えながら詳しく解説します。
この記事でわかること
- なぜ天井にアスベストが使われたのか、その理由がわかる
- 危険性の高い「吹付け材」と「ボード材」の見分け方がわかる
- 自宅やオフィスの天井が、どのくらいのリスクを持つ可能性があるか判断するヒントが得られる
- 天井のアスベストに気づいた時の、絶対にしてはいけないことと正しい対処法がわかる
天井の安全は、室内の空気環境の安全に直結します。正しい知識を身につけ、見えないリスクから身を守りましょう。
目次
なぜ天井にアスベストが使われたのか?
天井にアスベストが多用された主な理由は、その優れた「耐火性」「吸音性」「断熱性」にあります。
- 耐火被覆として: 大規模なビルやマンションでは、火災時に建物の骨組みである鉄骨が熱で歪み、倒壊するのを防ぐ目的で、鉄骨に直接アスベストを吹き付ける耐火被覆が施工されました。
- 吸音・断熱材として: 体育館や機械室、ボイラー室など、音が響いたり熱がこもりやすい場所の天井や壁に、吸音・断熱を目的としてアスベスト含有の建材が使われました。
- 不燃内装材として: キッチンやボイラー室など、火気を使用する場所の天井に、燃えにくい不燃ボードとしてアスベスト含有の建材が広く採用されました。
【危険度:高】天井のアスベスト建材①:吹付け材(レベル1・2)

天井に使用されるアスベスト建材の中で、最も注意が必要なのが「吹付け材」です。これらは飛散性が高く、アスベストレベル1または2に分類されます。
1. 吹付けアスベスト(レベル1)
アスベストとセメントを混ぜ、直接鉄骨などに吹き付けたもので、綿あめのようにモコモコとした質感が特徴です。極めて脆く、少しの振動でもアスベスト繊維が飛散する最も危険な状態です。
- 主な使用場所: ビルや工場の鉄骨梁、駐車場の天井、機械室など
- 見分け方のポイント:
- 表面がモコモコ、あるいはゴツゴツしている
- 指で押すと簡単に崩れるほど柔らかい
- 経年劣化で表面が剥がれ落ちたり、繊維が垂れ下がったりしている
2. 石綿含有吹付けロックウール/ひる石吹付材(レベル1または2)
吹付けアスベストの使用が規制された後、代替品としてロックウールなどにアスベストを混ぜて吹き付けたものです。見た目は吹付けアスベストと酷似しており、専門家でも見分けるのは困難です。
- 主な使用場所: 吹付けアスベストと同様
- 見分け方のポイント: 吹付けアスベストとほぼ同じ。含有されるアスベストの割合によってレベルが異なりますが、見た目での判断は不可能です。
【危険度:中~低】天井のアスベスト建材②:ボード材(レベル3)
事務所や店舗、住宅などでより一般的に見られるのが、板状に加工された「ボード材」です。これらは非飛散性でレベル3に分類されますが、破損すれば飛散するため注意が必要です。
1. 石綿含有吸音天井板(岩綿吸音ボードなど)
オフィスや学校、商業施設の天井で広く使われている、表面に細かい穴や模様(トラバーチン模様、虫食い模様)があるボードです。「ソーラトン」「ミネラートン」といった商品名が有名です。比較的柔らかく、画鋲が刺さる程度の硬さです。
- 主な使用場所: オフィス、店舗、学校、廊下、一般住宅の天井など
- 見分け方のポイント:
- 正方形(30cm角や60cm角など)のボードが組み合わさっていることが多い
- 表面に小さな穴や不規則な模様がある
- 比較的柔らかく、カッターで切れる程度の硬さ
2. 石綿含有けい酸カルシウム板 第1種
主に不燃性が求められる場所で使用された硬いボードです。岩綿吸音ボードよりはるかに硬く、手で割ることはできません。
- 主な使用場所: キッチンの天井、ボイラー室、地下室、軒天など
- 見分け方のポイント:
- 表面は平滑で、塗装されていることが多い
- 非常に硬く、叩くとコンコンと高い音がする
天井のアスベストに気づいた時の注意点と正しい対処法
もしご自宅や職場の天井が、ここで紹介した特徴に当てはまる場合、どうすれば良いのでしょうか。焦りは禁物ですが、放置も危険です。
絶対にしてはいけないこと
- 天井裏を自分で覗き込む: 天井裏には、飛散性の高い吹付けアスベストがむき出しの状態で存在している可能性があります。不用意に天井点検口を開けると、大量のアスベストを吸い込む恐れがあります。
- 天井材を自分で剥がしたり、穴を開けたりする: レベル3のボード材であっても、加工すればアスベストは飛散します。照明器具の交換やDIYなどは絶対におやめください。
- 粉じんを掃除機で吸う: 天井から落ちてきた粉じんを家庭用掃除機で吸うと、フィルターを通過してより微細な繊維を室内にまき散らすことになり、非常に危険です。
取るべき唯一の正しい行動
天井のアスベストが疑われる場合、取るべき行動は一つです。
「建物の管理者や専門の調査会社に連絡し、立ち入らないようにする」
専門家は、建物の設計図書を確認し(図面調査)、安全を確保しながら現地の目視調査を行います。そして、必要に応じて検体を採取し、アスベスト分析にかけることで、アスベストの有無と種類、レベルを科学的に確定させます。
まとめ:天井の異変は放置せず、専門家に相談を
私たちの最も身近な「頭上」に潜む、アスベストのリスクについて解説しました。
- まとめのポイント1:天井には、最も危険なレベル1の「吹付け材」から、オフィスなどで一般的なレベル3の「ボード材」まで、様々なアスベスト含有建材が使われている可能性があります。
- まとめのポイント2:「モコモコした吹付け」「穴の開いた模様のボード」など、見た目の特徴は判断の一助となりますが、最終的な確定診断は専門家の分析が不可欠です。
- まとめのポイント3:天井からの粉落ちや破損は危険なサインです。絶対に自分で対処しようとせず、速やかに建物の管理者や専門の調査会社に相談してください。
天井は、重力によって劣化や破損の影響が直接室内に及びやすい場所です。少しでも不安を感じたら、それを放置することなく、専門家の知識を頼ってください。私たちHAKUTOアスベスト分析センターは、正確な分析を通じて、皆様の安全な生活空間を守るためのお手伝いをいたします。
アスベストの定性分析が必要な時は、当社にご相談ください。
お客様の状況に合わせた最適なご提案をさせていただきます。


