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2025.08.25

アスベスト含有の石膏ボード、年代別の見分け方と安全な処分方法

「家の壁をリフォームしたいけど、この石膏ボードにアスベストは入っている?」
「天井のボードをDIYで剥がしても大丈夫?」

住宅やオフィスの壁、天井の下地として、現在も広く使われている「石膏ボード」。非常に身近な建材ですが、過去に製造された一部の製品には、アスベストが使用されていました。

見た目では全く区別がつかないため、古い建物の解体やリフォームの際に、知らずに破損させてしまい、アスベストを飛散させてしまうリスクが懸念されています。

この記事では、専門家の視点から、アスベスト含有石膏ボードについて、

  • リスクのある年代や種類といった見分け方
  • アスベストの危険性(レベル)
  • 安全な取り扱いと、法律に基づいた処分方法

を、徹底的に解説します。安易な自己判断は、あなたと家族の健康を危険にさらす可能性があります。正しい知識を身につけ、安全な住環境を守りましょう。

石膏ボードとアスベストの基礎知識

まず、石膏ボードとアスベストの関係について正しく理解しましょう。
石膏ボードは、石膏を主成分とした芯材を、両面から専用の厚紙で挟んだ板状の建材です。耐火性や遮音性に優れるため、壁や天井の内装下地材として広く使われています。

重要なのは、全ての石膏ボードにアスベストが含まれているわけではないという点です。ほとんどの一般的な石膏ボード(プレーンボード)には、アスベストは使用されていませんでした。

しかし、耐火性や強度をさらに高める目的で、一部の特定の製品(石綿含有せこうボード)には、アスベストが混ぜられていました。

【年代別】アスベスト含有石膏ボードの見分け方

アスベスト含有の可能性がある石膏ボードをどう見分ければよいのでしょうか。最も重要なのは「製造年代」です。

最重要ポイント製造年代を確認する

アスベスト含有の石膏ボードが製造されていたのは、主に1970年(昭和45年)から1986年(昭和61年)頃までとされています。特に注意が必要なのは、この期間に建てられた、あるいは改修された建物です。

ご自宅の設計図書や仕様書を確認し、この年代に該当する場合は、アスベスト含有のリスクを考慮する必要があります。1987年以降に製造された石膏ボードについては、原則としてアスベストは含まれていないと考えてよいでしょう。

注意すべき石膏ボードの種類

アスベストが含まれていたのは、主に以下のような特殊な石膏ボードです。

  • ひる石(バーミキュライト)含有ボード: 吸音性や耐火性を高めるために、ひる石(バーミキュライト)を混ぜた石膏ボード。このひる石に、不純物としてアスベストが混入していたことが問題となりました。天井材などによく使われています。
  • 化粧せっこうボード: 表面に模様や塗装が施されたもので、デザイン性を高めるためにアスベストが使用された製品がありました。

結論目視での見分けは不可能

スレート屋根のように表面の劣化具合で判断することはできず、石膏ボードのアスベスト含有は、目視で判断することは完全に不可能です。アスベストは内部の石膏に均一に混ざっており、見た目はノンアスベストの製品と全く区別がつきません。「割って中を見てみよう」などと考えるのは、繊維を飛散させる最も危険な行為ですので、絶対におやめください。

石膏ボードのアスベストレベルと危険性

アスベスト含有石膏ボードは、アスベストの飛散性の高さを示すレベル分類において、「レベル3」に該当します。

これは、アスベストがセメント等で固められており、通常の状態では飛散しにくい「非飛散性」の建材であることを意味します。壁や天井として固定されている限り、日常生活でリスクが生じることはほとんどありません。

しかし、危険なのは、解体やリフォームで、このボードを「切断、穿孔(穴あけ)、破砕」した時です。固められていたアスベスト繊維が、細かい粉じんとなって空気中に飛散し、それを吸い込んでしまうリスクが発生します。

安全な取り扱いと処分方法

原則専門業者に依頼する

レベル3とはいえ、アスベスト含有建材の取り扱いには専門知識が必要です。DIYでの安易な撤去は、ご自身だけでなく、ご家族や近隣にも健康被害を及ぼす可能性があります。撤去や処分は、必ず都道府県知事の許可を受けた専門の解体業者や産業廃棄物処理業者に依頼してください。

作業手順法律で定められた飛散防止措置

専門業者は、法律に基づき、以下のような飛散防止措置を講じながら作業を行います。

  • 作業場所に、関係者以外の立ち入りを禁止する表示を行う。
  • 作業員は、DS2以上の防じんマスクや保護衣を着用する。
  • 薬剤などで湿潤化させ、粉じんの飛散を抑制する。
  • 電動工具の使用を避け、できるだけ手作業で、ボードを割らないように丁寧に撤去する。

処分方法「石綿含有産業廃棄物」として適正処理

撤去されたアスベスト含有石膏ボードは、「石綿含有産業廃棄物」として、他の廃棄物と厳格に区別して処理されます。破れないように丈夫な袋で二重に梱包するなど、厳重な措置の上で、許可を受けた中間処理施設や最終処分場へ運搬されます。一般のゴミとして出すことは、法律で固く禁じられています。

唯一の確実な判別方法は「分析調査」

「うちのボードは1980年製だけど、本当にアスベストは入っているのだろうか?」

年代はあくまでリスクを判断する目安であり、100%の確定情報ではありません。リフォームの計画を立てる上で、また、本当の安心を得るために、白黒をはっきりさせる唯一の方法が「分析調査」です。

専門家が建材からごく少量のサンプルを採取し、それを分析機関で調べることで、アスベストの有無と種類を科学的に確定できます。結果が「不検出」であれば、過剰な対策や費用をかけずに、安心してリフォームを進めることができます。

石膏ボードのアスベスト対策は、正しい知識と確実な分析から

身近な建材である石膏ボードのアスベストについて、重要なポイントをまとめます。

  • アスベスト含有が疑われるのは、主に1970年~1986年頃に製造された製品。
  • 目視での判断は不可能。危険なので自分で割ったり壊したりしない。
  • 危険度はレベル3。通常時は安全だが、壊すと飛散するリスクがある。
  • 撤去・処分は必ず専門業者に依頼する。
  • 最終的な有無の確定には「分析調査」が不可欠。

壁や天井のリフォームを計画する際は、まずご自宅の築年数を確認し、リスクの可能性がある場合は、工事の前に必ず専門家にご相談ください。HAKUTOアスベスト分析センターは、高精度な分析で、お客様の安全な住まいづくりをサポートします。

アスベストの定性分析が必要な時は、当社にご相談ください。
お客様の状況に合わせた最適なご提案をさせていただきます。

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