ホーム アスベスト分析コラム 建材・レベル別 外壁の仕上塗材(リシン・スタッコ等)のアスベスト分析と調査の難しさ
2025.09.15

外壁の仕上塗材(リシン・スタッコ等)のアスベスト分析と調査の難しさ

「外壁の塗装をリフォームするだけだから、アスベストは関係ないだろう」
「昔ながらの砂壁や土壁のような仕上げだけど、まさかアスベストは…」

建物の外壁や内壁の最終的な質感を決定づける「仕上塗材」。リシンやスタッコといった、少し凹凸のある特徴的な仕上げを見たことがある方も多いでしょう。一見すると、アスベストとは無関係に思えるこれらの材料ですが、実はアスベスト事前調査において、最も判断が難しく、専門家を悩ませる建材の一つなのです。

この記事では、アスベスト分析の専門家として、

  • なぜ仕上塗材のアスベスト調査・分析は「難しい」のか?
  • 正しい検体採取(サンプリング)の方法
  • 除去や改修工事における、絶対に見落とせない注意点

について、その技術的な背景と共に詳しく解説していきます。

概要仕上塗材とは?リシン、スタッコ、タイル吹き付けなど

仕上塗材とは、建物の壁などの最終仕上げ(化粧)として、コテやスプレー(吹き付け)で施工される材料の総称です。主に、セメントや合成樹脂、骨材(砂や石の粒)などを混ぜ合わせて作られます。

過去の製品には、ひび割れ防止や耐久性向上、意匠性(デザイン)を高める目的で、アスベストが混ぜられていました。特に、1970年代から2000年代初頭にかけて施工されたものに、アスベスト含有の可能性があります。

代表的な種類には、以下のようなものがございます。

  • リシン吹き付け: 細かい砂粒状の、ざらざらした手触りの薄い仕上げ。
  • スタッコ吹き付け: リシンよりも厚みがあり、凹凸の大きな模様を作る仕上げ。
  • タイル吹き付け: 陶磁器タイル調の、硬質で立体感のある模様を作る仕上げ。

なぜ仕上塗材の調査と分析は「難しい」のか?

理由1多層構造になっており、アスベストの含有層が特定しにくい

仕上塗材が難しい最大の理由は、多くの場合、複数の材料が層となって塗り重ねられているためです。一般的に、下から「下地調整材」→「主材」→「トップコート(着色層)」という構造になっています。

そして、最も重要なのは、アスベストが、表面の主材ではなく、その下にある「下地調整材」にのみ含まれているケースが非常に多いという点です。表面を少し削って採取しただけの検体では、アスベスト含有の層を完全に見逃し、「不検出(アスベスト無し)」という誤った結果を導き出してしまう危険性があるのです。

理由2アスベストの含有率が低いケースが多い

吹付けアスベスト(レベル1)などが高い濃度でアスベストを含むのに対し、仕上塗材に含まれるアスベストの含有率が低い(数%程度)ことが多く、時には法律の基準である0.1%ギリギリというケースも少なくありません。このような低濃度の検体から正確にアスベストを検出するには、経験豊富な分析員の技術と、高感度の分析機器が不可欠となります。

理由3目視での判断が不可能

言うまでもありませんが、仕上塗材の質感や模様は、骨材である砂や石、合成樹脂によって作られており、アスベストの有無が見た目に影響することはありません。製品名や製造年が特定できない限り、目視だけで判断することは完全に不可能です。

重要正しい検体採取(サンプリング)の方法

仕上塗材の分析で最も重要なのは、正しい検体採取です。
前述の通り、アスベストは下地調整材に含まれている可能性が高いため、検体を採取する際は、カッターナイフなどで、必ず下地(コンクリートやモルタル)に達するまで、全ての層を貫通させて採取する必要があります。
表面の数ミリを削り取っただけでは、全く意味がありません。安全かつ正確な検体採取のため、必ず専門の調査資格者にご依頼ください。

注意除去・改修時のリスクと対策

仕上塗材の除去は、アスベストレベル3に該当します。改修工事(リフォーム)で最も注意すべきなのが、塗装の塗り替え前に行われる「高圧洗浄」です。
古い塗膜を除去するために、高圧洗浄機で壁面を洗い流すと、アスベスト含有の塗材が粉々になって飛散し、周辺環境を広範囲に汚染してしまう可能性があります。これは絶対に行ってはなりません。
除去する際は、薬剤を用いて塗膜を柔らかくしたり、手工具で丁寧に剥がしたりするなど、粉じんを飛散させない(湿潤化)工法を選択する必要があります。これらはレベル3の対策が必要な、飛散リスクの高い作業となります。

仕上塗材の調査は、専門家の知識と高精度な分析が鍵

外壁や内壁の仕上塗材は、アスベスト調査における「見えざる敵」とも言える存在です。その難しさを正しく理解し、適切な対応を取りましょう。

  • 仕上塗材は、複数の層でできており、表面ではなく下地にアスベストが含まれていることが多い。
  • 検体採取は、必ず下地に達するまで全ての層を採取する必要がある。
  • 古い塗材の高圧洗浄は、アスベストを飛散させるため極めて危険。
  • 低濃度での含有も多く、その判断には信頼できる分析機関による高精度な分析が不可欠。

「ただの塗装だから大丈夫」という思い込みが、最も危険です。仕上塗材の改修を計画される際は、まず専門家による正確な調査と分析で、リスクの有無を確実に把握することから始めましょう。HAKUTOアスベスト分析センターは、こうした判断の難しい検体の分析も、豊富な経験と実績で対応いたします。

アスベストの定性分析が必要な時は、当社にご相談ください。
お客様の状況に合わせた最適なご提案をさせていただきます。

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