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2025.06.30

アスベスト建材を破損した場合の対処法|住宅での見分け方も専門家が解説

「自宅の壁に穴を開けてしまった…これ、もしかしてアスベスト?」
「古い床材を剥がしたら、ボロボロと崩れてしまった…」

ご自身でのDIYや、ふとした拍子に、古い建材を誤って破損させてしまう事故は誰にでも起こり得ます。住宅で使われているアスベストの確実な見分け方は専門家による分析しかなく、だからこそ、万が一の際にどう対処すべきかを知っておくことが非常に重要です。

もしその建材がアスベストを含んでいたとしたら…と考えると、強い不安に駆られることと思います。

しかし、こんな時こそ、パニックにならず冷静に対処することが何よりも重要です。間違った行動は、かえって危険なアスベスト繊維を室内に飛散させ、状況を悪化させてしまう可能性があります。

本記事では、「アスベストの見分け方」の限界に触れつつ、万が一「アスベストかもしれない建材」を破損させてしまった場合に、被害を最小限に抑えるための緊急応急処置と、その後に取るべき正しいステップを、専門家として詳しく解説します。

そもそも住宅のアスベストは見分けられるのか?

結論から申し上げますと、住宅で使われている建材にアスベストが含まれているかどうかを、目視だけで100%正確に見分けることは専門家でも不可能です。

理由1アスベスト繊維は極めて小さい

アスベストの繊維は髪の毛の5000分の1程度と、肉眼では見えません。建材の中に均一に混ざっているため、表面の色や質感から判断することはできません。

理由2見た目が同じでも含有の有無は異なる

見た目が同じでも含有の有無は異なる
スレート屋根やPタイルなど、見た目が全く同じ製品でも、製造された時期によってアスベストが含まれているものと、含まれていないものが存在します。

理由3多くの非アスベスト建材と酷似している

アスベストを含まない安全な建材(ロックウールなど)と、危険な吹付けアスベストは、見た目が非常に似ており、プロでも見間違うことがあります。

このように、住宅におけるアスベストの確実な見分け方は、専門機関での分析以外に存在しません。だからこそ、古い建材を扱う際は常に「アスベストが含まれているかもしれない」という前提に立ち、万が一破損させてしまった場合の正しい対処法を知っておくことが、ご自身とご家族の安全を守る上で不可欠なのです。

まずは落ち着いて!絶対にやってはいけないNG行動

パニック状態で慌てて掃除を始めるのは最も危険です。まずは深呼吸をして、以下の「やってはいけないこと」を必ず守ってください。

NG行動1家庭用の掃除機で吸い込む

絶対にやめてください。家庭用の掃除機のフィルターは、アスベストの極めて細かい繊維を捕集できず、排気口から部屋中に繊維を撒き散らしてしまいます。汚染を家中に拡大させる最悪の行動です。

NG行動2ほうきで掃く

ほうきで掃く行為も、床に落ちたアスベスト繊維を舞い上がらせ、空気中に飛散させる原因になります。

NG行動3すぐに換気扇や扇風機を回す

空気の流れを作ると、飛散したアスベスト繊維が他の部屋にまで拡散してしまいます。まずは汚染を「広げない」ことが鉄則です。

NG行動4素手で触ったり、乾いた布で拭いたりする

直接触れることで繊維が手に付着し、そこからさらに汚染が広がる可能性があります。また、乾いた布での拭き掃除は、繊維を擦り付けて飛散させる原因になります。

応急処置被害を最小限に食い止める4ステップ

NG行動を理解したら、次は安全を確保しながら行う応急処置です。可能な範囲で、以下のステップを実行してください。

ステップ1立ち入り禁止と保護具の着用

まず、破損させてしまった部屋に、ご家族やペットが立ち入らないようにしてください。ドアを閉め、ドアの下の隙間をテープで目張りするなどして、空間を隔離します。
もしご自身が部屋に入る必要がある場合は、以下のものを身に着けてください。

  • マスク
    不織布マスクでも良いですが、可能であればN95などの高機能な使い捨てマスクを着用します。
  • 手袋
    使い捨てのゴム手袋やビニール手袋を着用します。
  • 衣服
    汚れてもよく、作業後に捨てられる古い長袖・長ズボンを着用します。

ステップ2湿らせて飛散を防ぐ

アスベスト繊維は、水分を含むと重くなり、空気中に飛散しにくくなります。
霧吹きスプレーに水と、少量の中性洗剤(食器用洗剤など)を入れ、破損した箇所や床に落ちた破片に、そっと吹きかけて湿らせます。勢いよく噴射せず、あくまで優しくミスト状にかけるのがポイントです。

ステップ3静かに拭き取る

湿らせた破片や粉塵を、ウェットティッシュや、湿らせたキッチンペーパーなどで、そっと掴むように、あるいは一方向にゆっくりと拭き取ります。ゴシゴシと擦らないように注意してください。
使用したウェットティッシュやペーパーは、すぐにビニール袋に入れます。

ステップ4密閉して保管し、体を清潔にする

破片や拭き取った紙類を入れたビニール袋は、空気を抜いて口をテープで固く縛り、さらに念のためもう一枚の袋に入れて二重にします。袋には油性ペンで「アスベストの可能性あり 触らないこと」などと記載し、お子様などの手が届かない場所に一時的に保管します。
作業後は、着用していた手袋と衣服をそっと脱いでビニール袋に入れ、同じように密閉します。その後、すぐにシャワーを浴びるか、手や顔をよく洗い流してください。

次に何をすべきか?専門家への相談と「分析」による事実確認

応急処置が完了したら、次のステップに進みます。ここからは専門家の知識が必要です。

ステップ1現状の記録と情報整理

スマートフォンのカメラで、破損した箇所の写真や、建物の築年数、リフォーム歴などを記録・整理しておくと、後の相談がスムーズになります。

ステップ2専門機関への相談

お住まいの自治体の環境保全課や、保健所には、アスベストに関する相談窓口が設けられています。今後の対応について、公的なアドバイスを受けることができます。また、アスベストの専門調査会社や、弊社のような分析機関に直接相談するのも有効です。

ステップ3アスベスト分析で「白黒」をつける

応急処置で回収した破片、あるいは破損箇所から改めて採取した検体を分析に出し、そもそも本当にアスベストが含まれていたのかどうかを科学的に確定させることが、最も重要な次のステップです。

「もしかしたら…」という不安を抱え続けるのではなく、分析によって事実を明らかにすることで、初めて適切な次の対応が決まります。もしアスベストが含まれていなければ、過剰な心配や対策は不要になります。逆に、もし含まれていた場合は、専門家による適切な清掃や修復が必要になるかもしれません。

分析の結果、アスベストだった場合の対応

もし分析の結果、アスベストが「検出」された場合は、応急処置だけでは不十分な可能性があります。
目に見えないレベルで繊維が室内に残存していることも考えられるため、専門の除去業者に相談し、HEPAフィルター付きの高性能真空掃除機(アスベスト用掃除機)による清掃など、専門的な処置を依頼することを検討してください。

「もしも」の時こそ、冷静な初動と専門家の知識を

アスベストかもしれない建材を誤って破損させてしまった場合、最も大切なのは「パニックにならず、飛散させない応急処置を施し、専門家に相談する」ことです。

住宅のアスベストの確実な見分け方はなく、最終的には分析が必要です。間違った自己判断での掃除は、かえって危険を拡大させます。まずは本記事で紹介した応急処置を可能な範囲で行い、安全を確保してください。

そして、その不安を根本的に解消する唯一の方法が、信頼できる機関による「アスベスト分析」です。私たちHAKUTOアスベスト分析センターは、お客様の緊急のご不安に対し、迅速かつ正確な分析で「事実」をお伝えします。確かな分析結果が、お客様とご家族の安全を守るための、そして安心を取り戻すための第一歩です。

アスベストの定性分析が必要な時は、当社にご相談ください。
お客様の状況に合わせた最適なご提案をさせていただきます。

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