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2025.08.28

アスベスト給付金をもらった人はいくら?認定事例と金額の決まり方

「建設アスベスト給付金の制度は知っているけど、結局、自分はいくらもらえるんだろう?」
「実際に給付金を受け取った人は、どんな状況で、いくら支給されたの?」

ご自身やご家族が建設アスベスト給付金の対象かもしれないと考えたとき、次に気になるのは、やはり「具体的な金額」ではないでしょうか。厚生労働省の資料には金額が記載されていますが、ご自身のケースにどう当てはまるのか、分かりにくい点も多いかと思います。

この記事では、アスベスト問題に詳しい専門家の視点から、この「建設アスベスト給付金制度」について、

  • 誰が給付金の対象になるのか?
  • 具体的にいくら受け取れるのか?
  • 申請はどのような流れで進めるのか?

といった核心部分を、できる限り分かりやすく、そして網羅的に解説します。あなたや、あなたの大切なご家族が、正当な救済を受けるための第一歩として、ぜひお役立てください。

そもそも建設アスベスト給付金制度とは?

建設アスベスト給付金制度とは、建設現場でアスベストにさらされ(ばく露)、中皮腫や肺がんなどの病気を発症した労働者や、一人親方、そのご遺族に対して、国が給付金を支給する制度です。

国が、建設作業員に対するアスベスト対策を怠った責任を認めたことに基づくものであり、個別の企業を相手取る「労災保険」とは別の、国に対する請求制度であるという点が大きな特徴です。

【対象者】あなたは給付金の対象?4つのチェックポイント

ご自身やご家族が給付金の対象となるか、まずは以下の4つの条件を確認してみましょう。

ポイント1特定の建設業務に従事していたこと

屋外・屋内の建設現場で、アスベストを吸い込む可能性があった作業に従事していたことが条件です。具体的には、以下のような職種が挙げられます。

  • 解体工、はつり工
  • 大工、とび工
  • 左官工、タイル工
  • 配管工(水道、ガス、空調など)、電工
  • 内装工、塗装工、吹付工
  • ブロック工、鉄骨工 など

ポイント2特定の期間に働いていたこと

上記の業務に、昭和50年(1975年)10月1日から平成16年(2004年)9月30日までの間に従事していた期間があることが必要です。

ポイント3特定の病気を発症したこと

アスベストが原因で発症する、以下のいずれかの病気にかかったことが条件となります。

  • 中皮腫
  • 肺がん
  • 著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚
  • 石綿肺(じん肺管理区分が管理2~4)
  • 良性石綿胸水

ポイント4ご遺族も対象です

上記の3つの条件を満たした方が亡くなられている場合、そのご遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹)も給付金を請求することができます。

【金額】給付金はいくらもらえる?

支給される給付金の額は、病気の種類や程度によって定められています。

病気の種類・状態 基本となる支給額
中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺(管理4)で亡くなった場合 1,150万円
良性石綿胸水、石綿肺(管理2・3)で亡くなった場合 1,000万円
現在、中皮腫などで療養中の方 1,150万円
現在、肺がんなどで療養中の方 病状に応じて700万円~1,150万円
現在、石綿肺(管理2・3)で療養中の方 病状に応じて550万円~950万円

この表の金額が、全ての計算の基礎となります。

給付金額の決まり方と調整(減額)について

上記の基本額から、個別の状況に応じて金額が調整(主に減額)される場合があります。重要な2つの調整ルールについて解説します。

調整1他の制度からの給付金との調整

すでに「労災保険」や「石綿健康被害救済制度」から、同じ病気を理由とした給付を受けている場合、その金額が今回の給付金から差し引かれます。これは、同一の損害に対して二重の補償が行われることを防ぐための調整です。

調整2肺がんの場合の喫煙歴による調整

アスベストによる肺がんの場合のみ、喫煙の習慣があった方は、給付額が1割減額される可能性があります。例えば、基本額が1,150万円の場合、10%にあたる115万円が差し引かれ、1,035万円となります。これは、肺がんの発症には喫煙も影響するという医学的知見に基づくものです。なお、中皮腫や石綿肺の場合は、喫煙歴があっても減額はされません。

【認定事例】ケース別・アスベスト給付金はいくらもらえた?

ケース1元大工・肺がんで亡くなったAさんのご遺族の場合

・状況:Aさんは1980年~2000年まで大工として従事。アスベストが原因の肺がんと診断され、亡くなられた。生前、喫煙の習慣があった。労災等の受給はなし。
・計算:基本額(肺がんで死亡)1,150万円から、喫煙歴による1割(115万円)が減額される。
・最終的な支給額:1,035万円

ケース2元配管工・中皮腫で闘病中のBさんの場合

・状況:Bさんは1978年~1999年まで配管工として、ボイラー室などで保温材の施工・撤去に従事。中皮腫と診断され、現在も療養中。労災等の受給はなし。
・計算:基本額(中皮腫で療養中)1,150万円。中皮腫は喫煙歴による減額がないため、調整はなし。
・最終的な支給額:1,150万円

ケース3元左官・石綿肺で労災受給歴のあるCさんの場合

・状況:Cさんは1975年~2002年まで左官工として従事。石綿肺(じん肺管理区分3)と診断され療養中。過去に労災保険から特別遺族一時金として300万円を受給済み。
・計算:基本額(石綿肺・管理3で療養中)800万円から、すでに受給した労災給付金300万円が差し引かれる。
・最終的な支給額:500万円

「認定」を得るための最重要ポイント

給付金を受け取るためには、まず国から「対象者である」という認定を得る必要があります。その最大のハードルとなるのが、過去の建設業務への従事歴を証明することです。

昔のことで資料が残っていなかったり、同僚と連絡が取れなかったりすることも少なくありません。給付金の申請を検討する際は、当時の仕事内容が分かるもの(給与明細、写真、同僚の連絡先など)を、できる限り探しておくことが重要です。

また、病気の診断書も不可欠です。アスベストによる健康被害は、その危険性を正しく理解することから対策が始まります。

正しい知識で、正当な救済を

アスベスト給付金でもらえる金額は、病状によって定められた基本額と、個別の状況に応じた調整によって決まります。

  • 給付金の基本額は、550万円~1,150万円。病気の種類や状態で決まる。
  • 労災など他の給付を受けている場合は、その分が差し引かれる。
  • 肺がんの場合のみ、喫煙歴があると1割減額されることがある。
  • 金額以前に、まずは職歴などを証明し「認定」されることが最も重要。

ご自身やご家族が対象かもしれないと思われたら、まずは諦めずに、厚生労働省や地域の労働局、あるいは弁護士などの専門家にご相談ください。この記事が、その一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

アスベストの定性分析が必要な時は、当社にご相談ください。
お客様の状況に合わせた最適なご提案をさせていただきます。

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