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2025.09.01

アスベスト除去工事の3つの工法|除去・封じ込め・囲い込みの比較

「建物にアスベストが見つかった…対策工事が必要だけど、どんな方法があるんだろう?」
「除去するしかないと思っていたけど、もっと安価な方法はないの?」

アスベスト対策と聞くと、多くの人が「すべて取り除く(除去)」というイメージを持つかもしれません。しかし、実は対策工事には、建物の状況や将来の計画、予算に応じて、主に3つの工法が存在します。

  1. 除去(じょきょ)工法
  2. 封じ込め(ふうじこめ)工法
  3. 囲い込み(かこいこみ)工法

それぞれの工法にメリットとデメリットがあり、どれを選択するかによって、費用、工期、そして将来にわたる建物の管理方法が大きく変わってきます。

この記事では、専門家の視点から、これら3つの工法を徹底的に比較解説します。正しい知識を身につけ、あなたの建物にとって最も合理的で安全な選択をするための一助となれば幸いです。

3つの工法を選択する上での基本原則

どの工法を選ぶべきかは、以下の要素を総合的に考慮して判断されます。

  • アスベストのレベルと状態: 飛散性の高いレベル1か、比較的安定しているレベル3か。また、建材が損傷して、すでに飛散の危険があるか。
  • 建物の用途と今後の計画: 今後も長く使い続けるのか、数年後には解体する予定なのか。
  • コストと工期: 対策にかけられる予算と、工事に許容される期間。

そして、これらの判断を下すための大前提となるのが、「現状の正確な把握」です。つまり、信頼できる事前調査と分析調査によって、アスベストの種類や含有率、状態を科学的に知ることが、すべてのスタートラインとなります。

【工法1】除去工法:根本的な解決を目指す

概要アスベストを物理的に取り除く

除去工法は、建物内に存在するアスベスト含有建材を、すべて物理的に取り除き、処分する方法です。アスベストの存在そのものをなくす、最も根本的な解決策と言えます。

メリット

  • 建物からアスベストの脅威が完全になくなり、将来にわたって安心できる。
  • その後の建物の使用や、将来の解体時に、アスベストに関する制約が一切なくなる。
  • 建物の資産価値向上にも繋がる。

デメリット

  • 3つの工法の中で、費用が最も高額になる
  • 工事期間が最も長くなる傾向がある。
  • 作業中にアスベストが飛散するリスクが最も高いため、レベルに応じた厳重な隔離措置や安全対策が必須。
  • 取り除いた建材は、特別管理産業廃棄物として、高額な費用をかけて適正に処分する必要がある。

適用ケース

建材の劣化が激しく、すでに飛散のリスクが高い場合や、数年以内に建物を解体する予定がある場合に選択されるのが一般的です。

【工法2】封じ込め工法:薬剤で飛散を防止する

概要薬剤を吹き付け、アスベストを固める

封じ込め工法は、吹付けアスベストなどの表面に、専用の薬剤(固化剤)を吹き付けることで、アスベスト繊維を固めて飛散しないように封じ込める方法です。

メリット

  • 除去工法に比べて、費用を大幅に抑えられる。
  • 工事期間が比較的短い。
  • アスベスト自体は取り除かないため、廃棄物が発生しない。

デメリット

  • 建物内にアスベストが残存するため、将来的な不安要素は残る。
  • 地震や衝撃で壁が破損した場合、内部からアスベストが飛散するリスクがある。
  • 定期的な点検やメンテナンスが必要。施工した箇所には「アスベスト封じ込め措置実施済み」の表示義務が生じる。
  • 将来、建物を解体する際には、結局、除去工事が必要となる。

適用ケース

吹付けアスベストの劣化が比較的軽微で、今後も建物を長期間使用する予定があり、解体の計画がない場合に適しています。

【工法3】囲い込み工法:壁で覆い、隔離する

概要アスベストを板材で完全に覆う

囲い込み工法は、アスベストが露出している壁や天井などを、非アスベストの板材(石膏ボードなど)で完全に覆い隠し、生活空間から隔離する方法です。

メリット

  • 除去工法に比べて、費用を抑えられる。
  • 工事期間が短く、比較的容易に施工できる。
  • 物理的に覆うため、軽微な衝撃からはアスベスト層を保護できる。

デメリット

  • 封じ込めと同様、建物内にアスベストは残存する。
  • 壁を新設するため、部屋が少し狭くなる。
  • 定期的な点検や表示義務が生じる。
  • 将来、建物を解体する際には、結局、除去工事が必要となる。

適用ケース

天井や壁など、比較的人が触れる機会の少ない場所にあるアスベストの対策として選択されることがあります。

【比較表】3つの工法を一覧でチェック

項目 除去工法 封じ込め工法 囲い込み工法
概要 物理的に取り除く 薬剤で固める 板材で覆う
メリット 根本解決、将来の安心 安価、短期、廃棄物なし 安価、短期、衝撃に強い
デメリット 高コスト、長期、廃棄物多 アスベスト残存、要管理 アスベスト残存、要管理
費用感 ★★★(高額) ★★☆(中程度) ★☆☆(比較的安価)
将来のリスク 無し 有り 有り

最適な工法選択は、正確な現状把握から

アスベスト対策には、大きく分けて「除去」「封じ込め」「囲い込み」の3つの工法があります。それぞれの特性を理解し、建物の状況や将来の計画に合わせて、最も合理的な方法を選択することが重要です。

  • 根本的な安心を求めるなら「除去工法」。
  • コストを抑えて当面の安全を確保するなら「封じ込め工法」や「囲い込み工法」。
  • ただし、封じ込め・囲い込みは、将来の解体時には結局除去が必要になる。

そして、どの工法を選択するにしても、その大前提となるのが「アスベストのレベルや状態を正確に知ること」です。信頼できる専門機関による分析調査で現状を科学的に把握することが、安全でコスト効率の高い対策工事を実現するための、最も確実な第一歩となります。

アスベストの定性分析が必要な時は、当社にご相談ください。
お客様の状況に合わせた最適なご提案をさせていただきます。

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