【場所別】アスベストが含まれている可能性がある建材一覧｜天井・壁・屋根など注意すべき場所を専門家が解説

「我が家にもアスベストがあるかもしれない…」
2006年以前に建てられた建物にお住まいの方なら、誰もが一度は抱く不安ではないでしょうか。しかし、アスベストは目に見えないため、具体的に「どこに」「どのような建材に」使われているのかを特定するのは非常に困難です。

アスベストは、その優れた断熱性や耐久性から、過去には建物のあらゆる場所で、多種多様な建材に使用されてきました。屋根や外壁といった外部だけでなく、私たちが普段生活している部屋の天井、壁、床、さらには給湯器の周りなど、その使用箇所は驚くほど広範囲に及びます。

この記事では、アスベスト分析の専門家である私たちが、アスベストが使用されている可能性が高い建材を、建物の「場所別」に、豊富な写真を交えながら網羅的に解説していきます。

この記事でわかること

• アスベストが使われている可能性のある場所が、屋外から屋内まで具体的にわかる
• 注意すべき建材の名称と、その見た目の特徴がわかる
• なぜその場所でアスベストが使われたのか、理由がわかる
• 専門家による調査の重要性が再認識できる

ご自身の建物のどこにリスクが潜んでいるのか。この記事をチェックリストとして活用し、漠然とした不安を、専門家へ相談するための具体的な情報へと変えていきましょう。

大前提：アスベストの有無は「分析」でしか確定できない

本題に入る前に、最も重要なことをお伝えします。
それは、「最終的に建材にアスベストが含まれているかどうかは、専門機関による分析でしか確定できない」ということです。
この記事で紹介するのは、あくまで「アスベストが含有されている可能性が高い建材」です。見た目や年代だけで「アスベストだ」「アスベストではない」と自己判断することは、非常に危険ですので絶対におやめください。

【屋外編】雨風にさらされる場所の建材

まずは、常に雨風や紫外線にさらされる屋外です。耐久性や耐火性が求められるため、アスベスト含有建材が多く使われてきました。

1. 屋根材

最も代表的なものが「スレート」と呼ばれる屋根材です。「コロニアル」「カラーベスト」といった商品名でも知られています。軽量で施工しやすく、価格も安価なため、多くの住宅で使用されました。

• 危険性（飛散性）： レベル3（非飛散性）
• 注意点： 経年劣化で割れやすくなっており、台風や地震で破損したり、塗装の剥がれやコケの発生を放置したりすると、アスベスト繊維が飛散するリスクが高まります。

2. 外壁材

戸建て住宅で広く普及した「窯業（ようぎょう）系サイディング」や、工場・倉庫の壁に使われる「石綿セメント波板」にアスベストが含まれている可能性があります。

• 危険性（飛散性）： レベル3（非飛散性）
• 注意点： 屋根材と同様、劣化によるひび割れや破損、塗装の劣化に注意が必要です。また、外壁に吹き付けられている「仕上塗材（リシン、スタッコなど）」にも、アスベストが混ぜられているケースがあります。

3. 軒天（のきてん）

屋根の軒（のき）の裏側にある天井部分です。耐火性が求められるため、「石綿含有けい酸カルシウム板第1種」などの不燃ボードが使用されていることがあります。

• 危険性（飛散性）： レベル3（非飛散性）
• 注意点： 普段あまり目にしない場所ですが、劣化が進むと剥がれ落ちる危険性があります。

【屋内編】生活空間の内装材

次に、私たちが日常的に過ごす屋内の建材です。不燃性や吸音性が求められる場所で多く使用されていました。

1. 天井

• 天井のボード材： 「石綿吸音天井板（ソーラトン、ミネラートンなど）」や、比較的柔らかい「岩綿吸音天井板」がオフィスや店舗、学校などで広く使われました。表面に穴が開いている、あるいは模様があるのが特徴です。
• 天井の吹付け材： アスベストの中で最も危険なレベル1に該当する「吹付け石綿」が、大規模なビルの駐車場や機械室、鉄骨の梁などに使用されている可能性があります。綿状で非常に脆く、飛散性が極めて高い建材です。

2. 壁

• 内壁材： 天井と同様、不燃ボードである「石綿含有けい酸カルシウム板」や「石膏ボード」が使われていることがあります。特に、コンロ周りなど火を使う場所の壁の下地材には注意が必要です。
• 間仕切り壁（パーテーション）： ビルや工場の間仕切りとして、「石綿セメント板」が使われているケースがあります。

3. 床

• 床材： 学校や店舗、オフィスの床でよく見かける硬い正方形のタイル「ビニル床タイル（Pタイル）」に、強度を増す目的でアスベストが使用されていました。
• 床材用接着剤： Pタイルや長尺シートを貼り付けるための接着剤にも、アスベストが含まれていることがあります。床材自体にアスベストがなくても、接着剤に含まれているケースは少なくありません。

【設備周り編】目に見えない場所の断熱材など

最後に、普段は目にすることがない、配管や機械の周りです。熱が発生する場所であるため、断熱目的で危険性の高いアスベスト建材が使用されていることがあります。

1. 配管やダクトの保温材

ボイラー室の配管や空調ダクトに、断熱材として「石綿含有保温材」が巻き付けられていることがあります。これは飛散性が高いレベル2に該当し、劣化すると容易に繊維が飛散するため非常に危険です。布で覆われていたり、金属の板（ラッキング）でカバーされていたりするため、外部からでは判断が難しい場合が多いです。

2. 給湯器・ボイラー本体の断熱材

古い給湯器やボイラーの内部に、断熱材としてアスベストが使用されていることがあります。

3. 煙突

集合住宅の排気用煙突や、業務用の焼却炉の煙突などに、セメントとアスベストを混ぜて作られた「石綿セメント管」が使用されていることがあります。

まとめ：不安な箇所があれば、まずは専門家に相談を