アスベストの飛散性はどれくらい危険?吸い込むリスクの高さとレベル別の対策を解説

「アスベストは吸い込むと危険」―これは誰もが知る事実です。しかし、すべてのアスベスト含有建材が、同じように危険なわけではありません。その危険性の度合いを決定づける最も重要なキーワードが「飛散性」です。
アスベストが法律でレベル1〜3に分類されているのも、この「飛散性」の高さに基づいています。飛散性が高いほど、アスベスト繊維が空気中に舞いやすく、吸い込むリスクが格段に高まるため、より厳重な対策が求められるのです。
この記事では、アスベストの危険性の本質である「飛散性」とは何か、飛散性の高い建材と低い建材の具体的な違い、そしてそれが私たちの健康に及ぼすリスクについて、専門家の視点から詳しく解説します。
この記事でわかること
- アスベストの「飛散性」という言葉の正確な意味がわかる
- 飛散性アスベストと非飛散性アスベストの具体的な違いがわかる
- なぜ飛散性が高いと吸い込むリスクが高まるのかがわかる
- レベル3(非飛散性)でも決して油断できない理由がわかる
この記事を読めば、なぜアスベスト対策でレベル分けが重要なのか、その根本的な理由を深く理解できるはずです。
目次
アスベストの「飛散性」とは?危険性を左右する最大の要因
アスベストの「飛散性」とは、その名の通り「アスベスト繊維がどれだけ空気中に飛び散りやすいか」という性質を指す言葉です。専門的には「発じん性」とも呼ばれます。
この飛散性の高さは、建材の中でアスベスト繊維がどのような状態で存在しているかによって決まります。
飛散性アスベスト(Friable Asbestos)
まるで綿あめのように、繊維同士がゆるく結合している状態です。少しの衝撃や振動、経年劣化で簡単に崩れ、大量の繊維が空気中に飛散します。極めて危険な状態と言えます。
非飛散性アスベスト(Non-friable Asbestos)
セメントや樹脂などでアスベスト繊維を固め、建材の中にがっちりと閉じ込めている状態です。例えるなら、コンクリートの中に鉄筋が埋め込まれているようなものです。通常の状態では繊維が飛散する可能性は低いですが、建材が割れたり削れたりすると、閉じ込められていた繊維が外部に放出されます。
アスベストによる健康被害は、空気中に浮遊した繊維を吸い込むこと(ばく露)で発生します。つまり、飛散性が高い建材ほど、ばく露のリスクが桁違いに高くなるのです。
飛散性の高さで決まる「アスベストレベル」

法律で定められているアスベストレベルは、この飛散性の高さに直結しています。
レベル1・レベル2:飛散性アスベスト
レベル1とレベル2に分類される建材は、すべて「飛散性アスベスト」です。除去作業を行う際には、作業員や周辺住民がアスベストを吸い込まないよう、法律で定められた最も厳重な対策が義務付けられています。
レベル1(著しく飛散性が高い)
- 代表的な建材: 吹付け石綿、石綿含有吹付けロックウールなど
- 状態: 綿状で非常に脆く、天井裏などでは常にアスベスト繊維が飛散している可能性があります。建物の解体時には、特別な知識なく立ち入るだけで大量にばく露する危険性があります。
- 対策: 作業場所を完全に密閉する「隔離養生」や、内部の気圧を下げて汚染空気が外部に漏れないようにする「負圧管理」など、最高レベルの対策が必須です。
レベル2(飛散性が高い)
- 代表的な建材: 石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材など
- 状態: 板状や筒状に成形されていますが、材質は比較的柔らかく脆いため、破損すると容易に繊維が飛散します。主にボイラーの配管や鉄骨の柱などに巻き付けられています。
- 対策: レベル1に準じた厳重な隔離措置や負圧管理が求められます。
レベル3:非飛散性アスベスト
レベル3に分類される建材は、すべて「非飛散性アスベスト」です。
- 代表的な建材: 屋根材(スレート)、外壁材(サイディング)、内装材(石膏ボード)、床材(Pタイル)など
- 状態: セメントなどで固められているため、硬く、密度が高いのが特徴です。建材が健全な状態であれば、アスベスト繊維が飛散するリスクは低いとされています。
最も重要な注意点:レベル3(非飛散性)も「壊せば」飛散する
アスベスト対策において、最も多くの方が誤解しがちなのが、このレベル3(非飛散性)の扱いです。
「レベル3は飛散性が低いから安全だ」と考えるのは、非常に危険な間違いです。
非飛散性アスベストは、あくまで「通常の使用状態において飛散しにくい」に過ぎません。
リフォームや解体工事で、以下のような作業を行えばどうなるでしょうか。
- 切る、砕く、穴を開ける、削る
当然、固められていたセメントや樹脂が破壊され、中に閉じ込められていた無数のアスベスト繊維が空気中に飛散します。その瞬間、「非飛散性」は「飛散性」へと変わり、レベル1や2と同様の危険な状態となるのです。
このため、レベル3建材の除去作業においても、作業場所を湿らせて粉じんの飛散を抑える「湿潤化」や、適切な防じんマスクの着用、飛散しにくい手工具での作業などが法律で厳しく定められています。安易なDIYなどは、絶対にやめてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 飛散性の高さは、見た目で判断できますか?
A1. 吹付け石綿のように明らかに綿状で脆いものは、飛散性が高いと推測できます。しかし、多くの建材は見た目だけでは正確な判断ができません。特に、非飛散性の建材にアスベストが含まれているかどうかは、専門家によるアスベスト事前調査と、専門機関によるアスベスト分析でなければ確定できません。
Q2. 昔の建物は、すべて飛散性の高いアスベストが使われているのですか?
A2. いいえ、そうとは限りません。建物の年代や用途によって、使われている建材の種類は様々です。飛散性が極めて高いレベル1の吹付け石綿は1975年に原則使用禁止となりましたが、危険性の低いレベル3の建材は2006年頃まで使用されていました。
Q3. 飛散したアスベストは、どのくらい空気中を漂うのですか?
A3. アスベスト繊維は非常に軽いため、一度飛散すると長時間にわたって空気中を浮遊します。閉鎖された空間では、数時間から数日間、あるいはそれ以上漂い続ける可能性があり、これが吸引リスクを高める大きな要因となります。
まとめ:飛散性の正しい理解が、吸い込むリスクを防ぐ鍵
アスベストの危険性を正しく理解する上で、「飛散性」という概念がいかに重要か、お分かりいただけたでしょうか。
- まとめのポイント1:「飛散性」とはアスベスト繊維の飛び散りやすさを示し、この高さがアスベストレベル(1, 2, 3)を決定しています。
- まとめのポイント2:レベル1・2の「飛散性アスベスト」は、少しの刺激で繊維が飛散するため極めて危険であり、厳重な隔離等の対策が必須です。
- まとめのポイント3:「非飛散性」であるレベル3建材も、切断や破砕によって容易に飛散し、危険な状態となります。決して安全だと油断してはいけません。
アスベストから身を守るための本質は、「いかにアスベスト繊維を飛散させないか、そして吸い込まないか」に尽きます。そのためには、まず専門家による調査を通じて、ご自身の建物にどのようなレベルのアスベストが、どのような状態で存在するのかを正確に把握することが、すべてのスタートラインとなります。
私たちHAKUTOアスベスト分析センターは、科学的根拠に基づいた高精度な分析により、目に見えないリスクを可視化し、皆様が安全な環境で暮らすためのお手伝いをいたします。
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