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2025.08.07

建設アスベスト給付金制度とは?対象者・金額・申請方法のすべて

「父は昔、大工として働いていたが、最近アスベストが原因の肺がんになった…」
「自分が対象かもしれないが、手続きが複雑そうでどこから手をつければいいか分からない」

建設業に従事し、アスベスト(石綿)にさらされたことで健康被害に苦しむ方や、大切なご家族を亡くされたご遺族のために、国による救済制度「建設アスベスト給付金」が設けられていることをご存知でしょうか。

この制度は、国の責任を認めた最高裁判決などを背景に、訴訟を起こさなくても、迅速に金銭的な救済を受けられるように創設されたものです。しかし、対象者の条件や申請手続きが複雑で、ご自身が対象となるのか、どう動けばいいのか分からず、お困りの方も少なくありません。

この記事では、アスベスト問題に詳しい専門家の視点から、この「建設アスベスト給付金制度」について、

  • 誰が給付金の対象になるのか?
  • 具体的にいくら受け取れるのか?
  • 申請はどのような流れで進めるのか?

といった核心部分を、できる限り分かりやすく、そして網羅的に解説します。あなたや、あなたの大切なご家族が、正当な救済を受けるための第一歩として、ぜひお役立てください。

そもそも建設アスベスト給付金制度とは?

建設アスベスト給付金制度とは、建設現場でアスベストにさらされ(ばく露)、中皮腫や肺がんなどの病気を発症した労働者や、一人親方、そのご遺族に対して、国が給付金を支給する制度です。

国が、建設作業員に対するアスベスト対策を怠った責任を認めたことに基づくものであり、個別の企業を相手取る「労災保険」とは別の、国に対する請求制度であるという点が大きな特徴です。

【対象者】あなたは給付金の対象?4つのチェックポイント

ご自身やご家族が給付金の対象となるか、まずは以下の4つの条件を確認してみましょう。

ポイント1特定の建設業務に従事していたこと

屋外・屋内の建設現場で、アスベストを吸い込む可能性があった作業に従事していたことが条件です。具体的には、以下のような職種が挙げられます。

  • 解体工、はつり工
  • 大工、とび工
  • 左官工、タイル工
  • 配管工(水道、ガス、空調など)、電工
  • 内装工、塗装工、吹付工
  • ブロック工、鉄骨工 など

ポイント2特定の期間に働いていたこと

上記の業務に、昭和50年(1975年)10月1日から平成16年(2004年)9月30日までの間に従事していた期間があることが必要です。

ポイント3特定の病気を発症したこと

アスベストが原因で発症する、以下のいずれかの病気にかかったことが条件となります。

  • 中皮腫
  • 肺がん
  • 著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚
  • 石綿肺(じん肺管理区分が管理2~4)
  • 良性石綿胸水

ポイント4ご遺族も対象です

上記の3つの条件を満たした方が亡くなられている場合、そのご遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹)も給付金を請求することができます。

【金額】給付金はいくらもらえる?

支給される給付金の額は、病気の種類や程度によって定められています。

病気の種類 支給額
中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺(管理4)で亡くなった場合 1,150万円
良性石綿胸水、石綿肺(管理2・3)で亡くなった場合 1,000万円
現在これらの病気にかかっている方(生存者) 病気の種類に応じて550万円~1,150万円
じん肺管理区分「管理2・3」で合併症がない方 260万円~410万円

※上記は基本的な金額です。喫煙歴の有無や、労災保険の給付状況によって調整される場合があります。

【申請方法】請求手続きの5ステップ

ステップ1必要書類の収集

申請には、ご自身の状況を証明するための様々な書類が必要です。特に、過去の職歴を証明する資料の収集が最も重要となります。

  • 必ず必要なもの: 請求書、戸籍謄本、住民票など
  • 病気を証明するもの: 診断書、石綿肺(じん肺)健康管理手帳など
  • 職歴を証明するもの: 建設業退職金共済手帳、同僚の証言、給与明細、源泉徴収票など、過去の職歴を客観的に示すもの

ステップ2請求書の作成と提出

厚生労働省のホームページなどから請求書の様式を入手し、必要事項を記入します。収集した証明書類を添付して、厚生労働省の「労働基準局労災管理課」宛に郵送で提出します。

ステップ3厚生労働省による審査

提出された書類に基づき、厚生労働省の審査会が、給付金の支給要件を満たしているかどうかを審査します。必要に応じて、追加の資料提出を求められることもあります。

ステップ4認定・不認定の通知

審査が完了すると、結果が書面で通知されます。認定された場合は、支給決定通知書が届きます。

ステップ5給付金の支払い

支給が決定されると、指定した金融機関の口座に給付金が振り込まれます。

申請にあたっての注意点と相談窓口

  • 請求期限: 給付金の請求には期限があります。原則として、病気の診断日や亡くなった日から20年以内とされていますので、ご注意ください。
  • 専門家への相談: 職歴の証明は非常に複雑で、困難な場合があります。ご自身での申請が難しいと感じた場合は、弁護士などの法律専門家や、労働組合、支援団体に相談することも有効な手段です。
  • 相談窓口: 各地の労働局や労働基準監督署に、給付金に関する相談窓口が設置されています。

あきらめずに、まずは相談を

建設アスベスト給付金は、建設現場でアスベストの危険にさらされ、健康を害された方々のための正当な権利です。ご自身やご家族が対象かもしれないと感じたら、諦めずにまずは行動を起こしてみましょう。

  • 「業務内容」「期間」「病気」「遺族」の4つの条件を確認する
  • 病気の種類に応じた給付金額を把握する
  • まずは診断書や職歴を証明できる資料がないか探してみる

手続きは複雑ですが、この記事が、あなたやご家族が正当な救済を受けるための一助となれば幸いです。不明な点は、厚生労働省や地域の労働局に問い合わせてみましょう。

アスベストの定性分析が必要な時は、当社にご相談ください。
お客様の状況に合わせた最適なご提案をさせていただきます。

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