アスベストの見分け方を専門家が解説|写真で見る建材別の特徴

「この壁紙の裏、アスベストじゃないかな…」
「実家のスレート屋根、劣化しているけど大丈夫だろうか…」
リフォームや解体を検討する際、また、ご自宅の安全性について考えるとき、多くの方がこのような不安を感じます。インターネットで検索すると様々な情報が出てきますが、本当に知りたいのは「自分の家のこれは、アスベストなのかどうか」という点ではないでしょうか。
本記事では、専門家の視点から、アスベストが含まれている可能性のある建材の視覚的な特徴を、場所別に【写真付き】で詳しく解説します。
ただし、最初に最も重要なことをお伝えします。目視だけでアスベストの有無を100%見分けることは、プロでも不可能です。この記事はあくまで初期の目安を知るためのものであり、最終的な確定には「分析調査」が不可欠である、ということを念頭にお読みください。
目次
なぜ目視での見分け方は難しいのか?
専門家でも「分析」を重視するのには、明確な理由があります。
理由1繊維が肉眼では見えない
アスベストの繊維は非常に細かく、髪の毛の5000分の1程度しかありません。建材の中に練り込まれているため、表面を見ただけでは分かりません。
理由2見た目が同じでも年代によって違う
スレート屋根や床材など、見た目が全く同じ製品でも、例えば1995年製のものにはアスベストが含まれ、2005年製のものには含まれていない、というケースが非常に多くあります。
理由3安全な建材と酷似している
アスベストを含まない安全な断熱材「ロックウール」と、最も危険な「吹付けアスベスト」は、見た目が非常に似ています。安易な自己判断は、大きなリスクに繋がりかねません。
【写真で見る】建材別・アスベスト含有の可能性がある特徴

ここでは、特にアスベストが使用されていることが多い建材について、その特徴を写真とともに深掘りして解説します。
屋根スレート屋根・波板
戸建て住宅で最も代表的なのが、「コロニアル」や「カラーベスト」といった商品名でも知られるスレート屋根です。特に旧クボタなどの大手メーカーが製造したもので、2004年以前の製品にはアスベストが含まれている可能性が非常に高いです。
特徴:平たい板状、または波型の形状。経年劣化で、コケが生えたり、白っぽく変色したり、ひび割れや欠けが見られます。
リスク:劣化して脆くなったスレート屋根を安易に踏むと、割れて転落する危険と同時に、アスベスト繊維を飛散させる二重のリスクがあります。また、知識のない業者による高圧洗浄は、周囲にアスベストを撒き散らす原因にもなります。
外壁窯業系サイディング
戸建て住宅の外壁材として広く普及しています。これも2004年以前の製品にはアスベストが含まれている可能性があります。
特徴:セメント質で、レンガ調や木目調など様々なデザイン模様があります。
リスク:通常の使用では飛散しませんが、リフォームで配管用の穴を開けたり、部分的に張り替えたりする際に、切断・穿孔することで粉じんが飛散するリスクがあります。
天井・壁石膏ボード・けい酸カルシウム板
事務所や台所、廊下などでよく使われるボード状の建材です。アスベストは表面ではなく、石膏に混ぜ込む形で内部に含まれているため、見た目では一切わかりません。
特徴:「アスベスト含有せっこうボード」として知られ、非常に多くの建物で使用されています。
リスク:穴を開けたり壊したりしない限り飛散リスクは低いですが、壁紙の張り替えで下地を傷つけたり、リフォームで壁を撤去したりする際に注意が必要です。
床Pタイル・塩ビタイル
学校や病院の廊下、スーパー、工場の事務所の床でよく見られる硬質のタイルです。1989年頃までの製品にアスベストが含まれている可能性があります。
特徴:タイル自体よりも、床に貼り付けるための黒い「接着剤」にアスベストが含まれているケースが非常に多いのが特徴です。タイルを一枚剥がしてみないと分からないため、判断が困難です。
どうすべきか:もし分析を依頼する際は、タイル本体と下地の接着剤の両方を採取することが、リスクを正確に把握する上で重要です。
その他断熱材・吹付け材・煙突
駐車場の天井、鉄骨の耐火被覆として使われる「吹付け材」や、ボイラー室・配管・煙突の「保温材」は、アスベスト含有率が高く、飛散性も極めて高い(レベル1)ため最も危険です。
特徴:綿状、または固形物で、天井裏や機械室、古い煙突の断熱部分などで見られます。
【警告】これらの材料をもし発見した場合、絶対に触ったり、近づいたりせず、すぐに専門業者にご相談ください。自己判断での対処は極めて危険です。
アスベストと間違いやすい建材(ロックウール等)との比較
「これはアスベストかも?」と不安にさせる建材の中には、よく似た安全なものもあります。代表的な2つを紹介しますが、これも最終判断は分析が必要です。
比較1ロックウール(岩綿)
吹付けアスベストと非常によく似た断熱材です。玄武岩などを高温で溶かして作られる人造鉱物繊維で、アスベストとは異なります。
見分け方のヒント:吹付けアスベストに比べて繊維がやや太く、光沢がないことが多いです。ただし、混合されているケースもあり、見分けるのは困難です。
比較2グラスウール(ガラス繊維)
リサイクルガラスから作られる断熱材で、こちらもアスベストではありません。
見分け方のヒント:白や黄色っぽい色をしており、光に当てるとガラス繊維がキラキラと反射するのが特徴です。
年代で見るアスベスト使用の目安
建物の建築年やリフォーム時期が分かれば、リスクを判断する一つの目安になります。
- ~1975年:最もリスクが高い時期。特に吹付けアスベスト(レベル1)が多く使用されました。
- 1975年~1995年:吹付けアスベストが原則禁止に。しかし、スレートなどの建材では依然として使用されていました。
- 1995年~2006年:規制が段階的に強化されましたが、含有率1%以下、のちに0.1%以下のアスベスト製品はまだ存在しました。
- 2006年10月以降:代替が難しい一部を除き、アスベスト含有製品の製造・使用が原則禁止されました。
「アスベストの見分け方」に関するよくある質問(Q&A)
Q. アスベストを少し吸い込んだら、すぐに病気になりますか?
A. すぐに症状が出ることはありません。アスベストによる健康被害は、数十年という非常に長い潜伏期間を経て発症するのが特徴です。そのため、過去に吸い込んだ可能性がある場合や、今後の飛散が心配な場合は、予防的な観点から調査・分析を行うことが重要です。
Q. 築何年以降の建物なら、絶対安全だと言えますか?
A. 2006年10月以降に着工した建物であれば、原則としてアスベスト建材は使用されていないと考えてよいでしょう。ただし、それ以前の建物については、たとえ小規模なリフォームであっても、過去にアスベスト含有建材が使用された可能性があります。建築年だけでなく、過去の改修履歴も確認することが望ましいです。
Q. 自分で検体(サンプル)を採って分析依頼してもいいですか?
A. レベル3の硬い建材(Pタイル等)であれば、飛散に細心の注意を払えばご自身で採取することも不可能ではありません。しかし、吹付け材のような飛散性の高いレベル1・2建材の自己採取は極めて危険なため、絶対におやめください。安全と正確性を期すため、どのレベルであっても専門の調査資格者が採取することを強くお勧めします。
結論:確実な見分け方は「プロによる分析」のみ
ここまで視覚的な特徴や年代について解説してきましたが、これらはあくまで「可能性」の域を出ません。黒か白か、安全か危険かを100%確実に判断できる唯一の方法は、専門家が建材の一部を採取し、それを顕微鏡などで詳細に分析する「アスベスト分析」だけです。
「もしかしたら…」という不安を抱えたまま過ごすよりも、専門家による分析で事実を確定させることが、本当の安心への第一歩です。アスベストの有無を調べる定性分析は、万が一の除去工事などに比べれば、決して高額なものではありません。
アスベストの見分けに迷ったら、まずは専門家にご相談を
アスベストの目視による完全な見分け方は不可能で、専門家でも分析が必要です。「スレート屋根」や「Pタイル」など、特定の建材や年代(特に2006年以前)はリスクが高いと認識し、もし疑わしい建材を見つけたら、決して自己判断で扱わないでください。
最も確実で安全な方法は、専門機関に依頼して「アスベスト分析」を行うことです。アスベストに関する不安や、ご自宅の建材分析に関するご相談は、いつでもHAKUTOアスベスト分析センターにお問い合わせください。科学的根拠に基づいた、確かな安心をご提供します。
アスベストの定性分析が必要な時は、当社にご相談ください。
お客様の状況に合わせた最適なご提案をさせていただきます。